退職勧奨は100-0ではない
「できない」従業員を解雇できるかどうかは100-0の問題だと一般には簡単に考えがちですが、実はそうではありません。
解雇は有効だが、手続は違法なので慰謝料を支払え、という判決が増え始めています。すなわち、「できない」「使えない」と判断しても、その従業員の強引な退職勧奨はリスクが高いのです。
本稿では、こうした、クビにしたいけれどできない従業員の取り扱い方を紹介します。
売り手市場で「できない」従業員ほど増長する
近時、採用活動は売手市場で、履歴書や面接内容に目を見るものがある若手は争奪戦です。しかし、そうした人材が必ずしも企業にマッチするとは限らず、期待した働きができない若手社員も多くいるのが現状です。
ここに輪をかけて、活躍できていない従業員側から、上司や同僚に責任をおしつけ、開き直ってしまうケースも多く、労使の溝はますます広がりやすくなりがちです。
強引が自主退職勧奨が日常化
こうした状況下でも、日本の法律では簡単に従業員を解雇できません。そこで、例えば職場内での無視や、一人だけランチに誘わないなどの嫌がらせをして、早期に退職を促すことが、私の職務経験上、もう10年以上も前から常態化していました。
私もこれはマズイと思っていたのですが、保守的な裁判所はかなり遅れてようやく最近、「痛み分け」の判決。すなわち、解雇は認めるがパワハラもあったので慰謝料は元従業員に支払え、という判決が出始めています
解雇相当でも手法を間違えれば賠償金の支払義務
解雇相当の人間を追い出すのは当然ではないか?と思いがちですが、解雇が相当であるかどうかは裁判官が事後的に判断します。
その前に、強引な退職勧奨のためにパワハラをしてしまえば、当然、先に手を出したもの負けで、慰謝料の支払い義務を負ってしまい、これは従前の退職勧奨敢行上、かなりリスクが高いです。
配属を調整しながら早期転職を自発的に促す
今回の裁判例を分析する限り、「従業員である以上は対等に扱われるべき」という理屈が強いように思われ、あからさまな仲間外れなどは今後、厳しい判決が予想されます。
ただ、成果を出していない人材に、希望部署に配属される権利はありません。人事権の範囲内でうまく配属を調整して、地道に転職を促していくのが最もリスクの低い手法だと考えられます。
まとめ
いわゆる「ハズレ」人材を引き当ててしまった場合、パワハラをして追い出そうとするのが最悪で、契約の範囲内で本人が希望しない部署に置いて転職を促すのが最善です。
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