美容室のサービスが二極化
美容室のサービスでの待ち時間の解決方針が二極化しています。
1つは、予約時間を丁寧に処理して、待ち時間を発生させない方針。もう1つは待ち時間のサービスを充実させて価格を上げる方針です。
サービス業では人が対応する以上、構造的に待ち時間は発生しやすいのですが、だからといって「仕方がないから」と顧客を待たせるだけでは、顧客離れが進んでしまいます。そこで本稿では、こうしたサービス業における待ち時間解消方法について複数のパターンを検証します。
QBハウスプレミアムのケース
QBハウスは言わずと知れた割安理髪店ですが、同社の良い取り組みは決して「安かろう、悪かろう」に安住せず、価格に見合った以上の水準のサービス提供に取り組んでいる点です。その結果、カットできれば良いだけの貧困層よりも、タイムパフォーマンスの良い理髪サービスを受けたいビジネスパーソン層の人気が高く、集客は安定しています。
そんなQBハウスは、顧客が多いと待ち時間が長くなって顧客満足度が落ちてしまうというパラドクスが生じがちです。そこで、プレミアムサービスとして追加料金を対価に精度の高い予約サービスを提供して人気を集めています。メインのビジネスパーソン層の心配は待ち時間であるため、これを解消する追加サービスにはニーズがあり、良い戦略だったと言えるでしょう。
高級美容室のケース
高価格帯の美容室では専門分業が徹底されるため、サービスの途中で頻繁に担当者が変わり、そこで待ち時間が生じます。
高価格帯の美容室では予約時間を調整したり、従業員の動きをAIで管理することではこの待ち時間をなくすことはできないと想定されることから、店内に配置する雑誌などを充実させたり、飲み物やマッサージの提供などにより、待ち時間の「間をつなぐ」取り組みが充実しています。
これも、中途半端に、待ち時間を10分から5分に努力で削減しても、顧客の不満はあまり解消されないため、待ち時間自体を充実させる方向性の戦略は良いと言えるでしょう。
品質とコストのバランスが大事
上記の2つのケースは完全に真逆の戦略ですが、共通している観点があります。サービス品質と提供コストのバランスをとることです。
QBハウスの顧客はタイパ・コスパを重視します。そのため、数百円の追加料金を徴収してでも待ち時間をなくせるのであれば間違いなく効率性は良く、そのサービスを選びます。
高価格帯の美容室では、待ち時間のストレスをなくすことでライバルと差別化でき、高価格にも納得してもらえるため、手の空いているメンバーでできる追加サービスを提供して価格を上げること自体はお互いにウィンウィンな取り組みになります。
両者とも、値上げできる範囲内のコストでどの分野のサービスをどの程度向上させられるかに着目した戦略である点で共通しています。
顧客の時間価値に注目を
本質的サービスの向上に努めていると、ついつい「高水準のサービスを提供するためにある程度の待ち時間は不可避」と考える方もいますが、現代だからこそtime is money! 顧客の時間価値を守るサービスの提供は絶対に見失ってはいけませんし、そのためにお店の費用対効果の観点で何ができるか、どうすれば顧客は喜んでくれるかを、顧客層の意向と予算をふまえながら考えていくことが大事ですし、その取り組みが意外なところで付随サービスでの差別化を生み出すかもしれません。
まとめ
こんな時世だからこそ、殿様商売で高品質の商品やサービスを売ればよいだけではなく、待ち時間などの顧客の不満の芽を摘み取っていく地道な作業が必要です。そのためには、顧客と丁寧にコミュニケーションを果たしてその芽を正確に認識し、費用対効果の合う最善策を見出す必要があります。
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