相続が発生してから対応では遅い
人生100年時代、人はいつ亡くなるかわかりません。そのため、相続手続は発生してからすれば良い、と考える方が多いのですが、相続が発生すると次々と期限がやってきてとても納得できる内容で計画的に手続をこなすのは困難であるケースが多いです。
遺産分割や相続税など、相続前にある程度準備しておくことで、期限に余裕を持って納得のいく手続を進めることが可能となり、まさに相続は発生前の計画が9割。本稿ではこの事を整理したいと思います。
相続放棄期限は3か月。長いようであっという間に過ぎる
相続が発生して最初にやってくる大きな期限は3か月目の相続放棄期限です。相続放棄を判断するためには遺産全体を把握し、負債が資産を上回るかどうかを確認する必要がありますが、最近では郵便連絡がなくなり、スマホの中だけで完結する契約も多いため、その把握に時間を要するケースが増加しています。
この間には葬式からお通夜、四十九日などやるべきことは他にたくさんあり、3か月という時間はあっという間に過ぎてしまいます。
そこで、生前のうちに遺産リストを作成しておく、特に親族が把握しにくい負債とデジタル契約を明確にしておくだけでもこの期間の負担は大きく軽減します。
準確定申告・相続税申告次々と期限はやってくる
相続放棄期限の後には、4か月目に被相続人の準確定申告、10か月目に相続税の申告期限が次々とやってきます。
相続税の申告は特に手間がかかり、期限が迫ってから税理士に依頼しても断られてしまったり、多数の税理士の動員が必要となり過大な費用がかかることもあります。また、相続手続完了前は相続財産である預金をおろすことはできないため、相続税は自身の資産から納める必要が生じるケースも多く、その原資を探すことも必要になります。
相続手続の最大の負担はこの相続税の申告ですが、例えば相続させることが確定的な不動産や株式などは早めに税理士に相談して評価手続を進めることも可能であり、この点でも相続前の準備が重要になります。
遺産分割が完了しなければ相続税納税の準備も対策もできない
相続税の申告をするためには、原則として遺産分割が完了していることが望ましいです。しかし、相続人間で遺産分割の争いがあり、調停などを行うようであればとても10か月の期限には間に合いません。
この点についても生前に準備できることはいくつかありますが、最も簡便なのは遺言書の作成です。遺言書を作成して遺産目録とその分配を明記しておけば相続手続の負担は大幅に軽減でき、相続人の不満も和らげることができるケースは多いです。
遺留分請求対策も事前に必要
遺言書を作成すればすべて解決というわけではありません。遺言で指定された遺産や割合に不満のある相続人は相続をしった時から1年間、遺留分減殺請求を行うことができるためです。
一般的には、相続分を少なく指定する相続人には遺留分減殺請求をしないでほしい、という旨を遺言に記載しますが、これはお願いベースであるため拘束力はありません。
そのため、法廷闘争がどうしても嫌な方は、遺留分の範囲内で遺言による遺産分割を調整するという手法をとることもあります。
まとめ
相続は財産を受け取れるという面ではポジティブな事にも見えますが、財産がからむからこそ泥沼化しやすく、その一方でシビアな期限に悩まされることも多いため、生前対策を強くお進めしています。
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