生成AIでアニメ制作。そのメリットと注意点とは?

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生成AIが作成したアニメが地上波で公開

生成AIが様々な文章やイラストを作成できることは各種報道で認知されてきましたが、その裏で著作権侵害などの問題も顕在化しています。著作権侵害は、元権利者の人格権にも関わる権利で、そうした面にも配慮が不可欠です。
そんな折、生成AIが作成したアニメが地上波報道されることとなりました。このことが賛否両論を呼んでいます。
肯定派の主張は、現状のアニメーターの労働負担が大きすぎるため、AIを活用しなければ、とても中長期的なアニメーターを確保していくことが困難であることが中核にあります。
逆に否定派の主張は、生成AIの産物が世の中に出回ることにより、権利侵害や類似品が拡散され、原作者を中心とした著作者に権利が侵害され得ることへの懸念が中核にあります。
そこで本稿では、こうした生成AIアニメのメリットと注意点を整理していきます。

アニメーター業界は業界トップクラスの人手不足

今、どの業界でも人手不足で、欲しい人材を適時に獲得するのは困難です。その中でもアニメーターは需要はコンスタントにある反面で、人手不足は著しいです。
アニメーターは人気漫画などをアニメ化する点では夢のある仕事ですが、アニメを作るためには微妙に異なる図をたくさん作る必要があり、その実態は長時間単純作業です。それでいて、高度な技術が要求されるため、その人手不足は業界トップクラスです。
さらに、短納期や手直しの頻度が多かったり、「京アニ」事件で逆恨みから多くの人が亡くなった事件などもあり、アニメの仕事には関わりたいけれどもアニメーターは・・・と思う方はどうしても増加しにくいのが現状です。こうして、アニメを作るためには深刻な人手不足の問題を避けて通るわけにはいきません。その救世主候補が生成AIなのです

著作権者の権利侵害してまで守るものではない?

生成AIがアニメを制作するとなると、当然、倫理や権利侵害の問題が生じます。生成AIはオンライン上の素材を組み合わせてアウトプットしますが、オンライン上のコンテンツのすべてがフリーであるわけはなく、大多数は、私的利用まではフリーだが、商業利用はNGというものがほとんどでしょう。
つまり、生成AIを活用すれば著作権をはじめとする漫画家等の権利を侵害する可能性が高く、そうまでして儲けたいかという倫理の問題も生じやすいです。
日本は世界に輸出できる有料コンテンツをたくさん有していますが、その売り出し方が下手だとも言われています。世界レベルで通用するアニメ産業を守るためには、まずその原作者をしっかり守ってただ乗りさせないことが不可欠だ、という否定派の意見にも理屈はたっています。

アニメーターの雇用を脅かすリスクは低い

否定派の主張として、アニメ産業を支えているのは間違いなく個々のアニメーターであり、生成AIが出しゃばれば、こうしたアニメーターの雇用を脅かすおそれがある、という指摘があります。
しかし、今回の生成AI作成アニメ「ツインズひなひま」を見てみると、とてもじゃないですが、生成AIの作画はアニメーターの仕事に遠く及びません。そのため、生成AIが作画を担当する=アニメーターの待遇が悪くなるではなさそうですし、「作業」を機械に任せて、人間はチェックに集中することも大事な役割分担です。
そのため、生成AIの活用は直ちにアニメーターの雇用を脅かすわけではなく、単純作業的な業務をAIに任せて人は仕上げ工程に集中するという役割分担の可能性もあります。

生成AIは品質ではなく効率改善に活用せよ

生成AIを全工程に活用したアニメ、と言われると、既存のアニメーターの立場がありません。そして、現時点ではまだまだ人の仕事の方がはるかにクオリティは高いです(将来は知りませんが)。そんな中、人とAIは、前者がクオリティ、後者が効率改善に役割分担して、お互いの長所をいかしながら人手不足やコストカットなどを最適化していくことが不可避なのだと考えられます。
そう考える限り、生成AIはアニメーターの仕事を奪う存在ではまだありませんし、アニメ産業の効率化に生成AIを導入するメリットも明確になります。デメリットである権利侵害については、「ツインズひなひま」はかなり厳格に対応しているようですが、AI丸投げではなくきちんと人が管理する体制が不可欠なのでしょう。

まとめ

アニメ業界の課題はかなり深刻です。生成AIはそこにとどめを刺す存在となれば、世界に誇る日本のアニメ業界はそう長くありません。そうではなく、人とAIが共存する役割分担を模索すれば、こうした課題を解決しながらアニメ需要を伸ばしていくことも可能でしょう。「ツインズひなひま」の取り組みはこの点にしっかり向き合っており、今後の発展が期待されます。
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