中小企業のプレスリリースや求人広告でAI作成文章が急増
大規模言語モデルを利用した文書作成、すなわち生成AIに作成させたテキストを自社ウェブサイトなどで活用する企業が増加しています。特にプレスリリースや求人広告などでこうしたテキストの活用が確認され、国連などの公的機関から、中小企業までプレスリリースなどのオフィシャルな文章の一部を生成AIが作成していることが確認されています。
生成AIはアバウトな指示にはアバウトな返答しかしませんが、指示を細かくするとこれに的確に答えた文章などを作成してくれますので、非常に便利です。文章の作成には時間も手間もかかりますので企業の抱える課題の解決にもつながり便利なのですが、逆にデメリットも大きいことはあまり気づかれていません。そこで本稿では、生成AIに公式の文章を作成させる背景を説明した上で、そこにどのような落とし穴があるかを説明します。
従業員の能力不足と人手不足
中小企業を中心に、ウェブサイトに掲載する文章などを生成AIに作成させる背景には、リソース不足が挙げられます。文章を作成するためには高い国語力が必要ですが、最近の義務教育では旧来の日記作成などのような作業量の多い宿題が消える傾向があり、文章作成の場数を踏んだ若手が少ないのが現状です。そのため、そもそも企業情報として公開する文章を書く能力がない従業員も多いです。また、1から文章を作成するのは時間がかかりますし、人の作成する文章にはどうしても誤字脱字や説明不足が生じがちなため、校閲も必要となります。こうして複数の人の時間が大きくとられることは、人手不足の組織には大変負担が大きいのも大きな課題であり、生成AIに文章を作成させることができれば、人の手間を減らしながら、精度の高い文章を作成することができ、一石二鳥です。
発信内容の画一性
生成AIが作成する文章は、膨大な数の事例の中から指令内容に見合ったものを選定し、これらを組み合わせながら、指令内容にできる限り忠実に組み合わせた内容に仕上げられるパターンが多いです。ここで、まず指令内容がずれていたり、指令の作成に時間を要していては目的は達成できませんので、文章作成の生成AIに投げかける指令の内容がマニュアル化してしまいがちです。そうすると、似たような指令に対しては似たような文章を生成AIは再現するため、どこの企業のプレスリリースの内容も似たり寄ったりの画一的なものとなりがちです。これは、文章の安定性という観点から見れば望ましい傾向ですが、裏を返せば企業の独自性を表現することができず、読者に響く内容とはなり得ないということでもあります。対策として、指令内容にオリジナリティを加えることが考えられますが、そうすると再び効率性が悪くなってしまいます。
発信内容の信頼性
我々が日々目にする情報のすべてが正しいわけではありません。むしろ誤った情報の方が圧倒的に多いと推計されます。そのような情報の真偽は我々が自分の責任で判断する必要がありますが、生成AIにはそうした真偽判定を実質的に判断する力はありません。すなわち、誤った情報を誤ったまま素材として文章を作成するため、最終的に作成された文章の信頼性が高まらない可能性がどうしてもあります。それどころか、誤った情報をプレスリリースしてしまうと企業が責任を負ってしまう可能性さえあり、どうしても最終のアウトプット内容を人間が検証し、真偽判定し、誤った内容や誤解され得る内容は個別に手直しする必要が生じます。これが少なくて済めば良いのですが、全範囲に渡って手直しをすべきとなると、最初から人が文章作成した方が良かった、ということにもなりかねません。
発信内容のチェック体制
生成AIの作成した文章を公開するためには、必ず人の手でその内容を確認する必要があります。その確認も、ざっと斜め読みして誤字脱字や文章構造としておかしい箇所がないかをチェックするだけでは足りず、実質的に内容をきちんと精査することが必ず必要です。しかし、文章を作成できる能力が不足しているから生成AIを活用するような企業では、そもそもこのような実質的な文章チェックができないのであり、生成AIの文章をチェックする体制が設定できません。そうすると、生成AIは自由に文章を作成し放題であり、企業責任につながる文章作成に至ってしまうのも時間の問題です。生成AIに作成させた文章をつかうのであれば、必ず誰がその文章をチェックして掲載可否を判断するか、体制をきちんと定めなければなりません。
まとめ
生成AIは指令の作成に工夫が必要ですが、そこをクリアすればかなり我々の期待に応えた文章作成を行ってくれます。そもそも文章作成できない人材が増え、また構造的な人手不足の中、生成AIを活用しない手はありませんが、生成AIの作成する文章は画一的で企業の独自性を出すことがなかなか難しく、また、文章の内容を厳密にチェックする体制も必要であり、やり方次第では逆に企業活動の効率性を損ねてしまう可能性も高まってしまうため、注意が必要です。
当研究所では、生成AIは使えますが、こうした観点から、重要な文章は必ず人が直接作成しています。御社のプレスリリース作成の効率化につきまして、生成AIを使える弁護士・ITストラテジストが広い視点から課題解決を試みますので、下記よりお気軽にご相談ください。
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