「餃子の王将」の対競合戦略を読み解く

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王将の前年同月比の営業成績が快進撃

「餃子の王将」といえば、ちょっと小腹が空いた際に行きたいチェーン店ですが、他の飲食店と変わらず値上げが進んでいます。しかし、値上げが繰り返し進む中でも、客離れを起こさず、むしろ全社レベルでの売上は、およそ3年間にわたって同月比過去最高を更新し続けています
値上げによる顧客離れが怖いため値上げに踏み切れない業者が多い中、「餃子の王将」はなぜ値上げと売上増加を両立させていいます。
「そんな方法あれば教えて欲しい」
と誰もが思うところですが、その背景には餃子の王将による地道な対競合戦略があります。本稿では、この戦略を掘り下げて分析していきたいと思います。

対「町中華」の差別化戦略

中華料理を食べたい、と思った際にどういった店を探すでしょうか?おいしいラーメンを食べたければラーメン専門店を探すでしょう。これは餃子の王将の競合相手ではありません。
「おいしいものをリーズナブルにお腹いっぱい食べたい」
そうした層を取り込むにあたって競合になるのはまずは町の中華料理屋です。
では、町の中華料理屋と餃子の王将、どちらを選ぶかとなると私も含めて後者を選ぶ方がかなり多いと想定されます。その理由は、餃子の王将は標準的な人間の味覚で美味しいと思える味を徹底的に追及しているうえ、中華料理屋にありがちなボリューム優先ではなく、子どもや高齢者にも優しいサイズ設定もできます。
こうして、餃子の王将は味とメニューの豊富さで明確に町中華と差別化しているから、皆、王将を選ぶのです。

対「チェーン店」の差別化戦略

中華料理のチェーン店はいくつかあります。しかし、王将が一番だと考える方は依然、高水準です。その背景には、王将の立地・出店戦略があります。
大手中華料理チェーン店は、業態として「ファミレス」でファミリー層の取り込みを重視しています。そのため、都市中心部での出店は難しくニッチ市場の取り込みを目指しています。そのため、最大の競合であるバーミヤンに対しても店舗数で約2倍の差があります。
これに対し、餃子の王将はおひとり様を受け入れるため、ビジネス街のちょっとしたスペースで開業できますし、もちろん、地方でのファミリー層の受け入れもやっています。
メニューの多様化は前項の通りで、こうして餃子の王将は競合チェーン店に対して、立地やメニューで明確に差別化することにより、競争優位を築いています。

対「ロボット」の差別化戦略

餃子の王将は、比較的リーズナブルな価格帯の店ですが、決してアルバイトのマニュアルサービスには依存していません。お客が面倒くさくならない程度に話しかけ、場を盛り上げる接客ホスピタリティがしっかりと徹底されています。
この程度感は簡単なようで難しいと思うのですが、なぜ餃子の王将が無機質な食堂にしないのかというと、今後導入が想定される接客ロボットとの差別化を意識し、「気軽に入りやすい」店を意識しているのだと思います。
効率性では人はロボットには勝てませんが、むしろ勝つ必要はなく、多少コストがかかってもマニュアル人間より人を引き付けられる接客のできる人間を採用するやり方は差別化戦略として大変興味深いです。
また、従業員のモチベーションアップにも余念がなく、キャリアップや独立支援のほか、地域のニーズに合致したオリジナルメニューの考案なども一部認めており、各店舗に独自メニューを開発する権限を付与するなど、「人」として個人に注目し、ロボットと差別化する意識の強さが良く見えてきます。

先行投資を怠らない

餃子の王将チェーンは十分儲かっています。しかし、もっと重要なのはその収益をきちんと次のステップのために先行投資していることです。
餃子の王将は、中長期的視野に基づく経営戦略の一環である新市場開拓戦略として、新しいコンセプトでの出店に挑戦しています。女性の視点と感性を発揮させた特別チームによる、女性をメインターゲットとした店舗にも挑戦していて、今後もマーケットニーズを敏感に察知して、積極的な先行投資を続けていきそうな感じです。
値上げした分はきちんと従業員の給料に還元して定着を促しているうえ、新店舗や新メニューの考案の手も決して止めない。こうした絶えざる未来への投資の意識が、餃子の王将チェーン全体の組織風土を形成し、前向きにどんどん成長していく実績につながっていることを疑う余地はほとんどないと思われます。

まとめ

餃子の王将は、日本の大多数の人間の知るトップ企業ですが、その地位に甘んじることなく、成長意欲を組織内外に行動で示し続けている点が大変すばらしいと感じます。
ある程度売れたら守りに入る企業も多い中、「攻め続ける」ことが中長期的に生き抜くカギですし、そのやり方を体現している分かりやすい例かと思います。
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