令和8年度から子ども・子育て支援金制度が開始
来年度から子ども・子育て支援金制度が始まります。子ども・子育て支援金制度とは、収入のあるほぼ全世代から医療保険を上乗せするかたちで費用を徴収し、これを子育て世代に分配していく制度です。
今、日本のGDPが大きく伸び悩んでいます。その背景にあるのが出生率の減少です、子どもが減少しているため生産年齢の人数はどんどん減少します。そうすると、あちこちの企業で人手不足が生じ、従業員がいればもっと生産できるにもかかわらず生産を減少させたり、少ない人数で強引に生産を進めて残業代や労災の負担が増加して生産性は向上しません。
そこで本稿では、この新制度が我々の生活にどの程度のインパクトを生じ、それをお受け手我々はどのように生活していくべきかを整理します。
独身世帯にとってはリターンのない社会保険料
子ども・子育て支援金制度は、収入に応じて医療保険料の月額を増加させて徴収されるものです。その徴収される金額は、令和9年度分で年収200万円であれば月額350円ですが、年収1000万円であれば月額1650円になるといった感じで概ね年収に比例するかたちで増大する仕組みとなっています。
これは税金ではなく社会保険料ですが、給与所得者は給料から強制的に源泉徴収されるもので、自営業者は自発的に納めなければならない費用である点で、ほぼ税金と同じような仕組みで徴収されるものと多くの方は認識されるでしょう。
子育て世代はここで一時的に徴収されたお金はしばらくして支援金として増額して返ってきますが、独身の方は保険料をとられるだけでリターンが一切ない点で、この制度は「独身税」と言われています。
令和10年までの間に段階的に増加
どんな制度でも、費用負担を課す新制度は、最初は緩やかにスタートし、時間の経過とともにどんどん増額されていきます。子育て支援制度も同様で、例えば、年収200万円の方であれば、初年度は月額250円ですが、翌年度は350円、令和10年度は450円と、2年で倍近くに膨らんでいきます。
このような漸増する負担は、特に源泉徴収される給与取得者にはなかなか体感しにくく、例年と同じように消費活動をしていたらお金が全然足りなくなった、といった感じでピンチに陥って初めて気づくことも多いです。また、子育て世代も支援金の収入の方ばかり気になって、支出が増えて手取りが減っていることに気づきにくいため、うっかり支援金を子育て費用に全額費消してしまうと、その他の家計が圧迫されてしまうおそれがあります。
子育て世代の社会保険料減額ではダメなのか?
この制度ですが、子育て世代にとっても、独身世代にとってもメリットがあまり大きくありません。独身世代にメリットがないことは、徴収されるだけでリターンがない点です。他方で子育て世代の方でも、社会全体から徴収された総額から、事務費用などを控除した残額を再分配するため、分配額が決して満足のいくものにはならない点で不満が残ります。
では、こうした事務費用等を削減するために、社会保険料を徴収して再分配する仕組みではなく、直接的に子育て世代の社会保険料を減額すれば良いではないか、という意見が出てくるところですが、これでは行政側において徴収できる保険料が少なくなり、運営が困難になってくるため実現性に乏しく、その結果、このような方式になったと考えられます。
塵も積もれば。子育て資金は我慢の積み重ね
子育て支援は低所得者層に手厚く配分されます。その結果、高所得者層にとっては児童手当などは保険料の負担増加を穴埋めする程度にしかならず、あまりありがたみはありませんし、低所得者層にとっては児童手当などはありがたいのは間違いないですが、必要経費を賄うために全然不足していることも事実です。
ただ、これは仕方のないことで、子育てに関する費用をすべて行政がフォローするのは現実的ではありません。子育てに関する取り組みは、1つ1つは些細なもので、それを積み重ねていくことが大事です。そのため、こうした手当などは大事に活用すべきですし、不足する子育て資金は、家計の削れる部分を粘り強くコツコツ削っていくしかありません。こうした努力が面倒くさいことが、最近の若い人たちが出産しない傾向につながっているかもしれません。
まとめ
子ども。子育て支援金制度の開始で、現役世代は負担が確実に増える反面で、子育て世代においては焼け石に水程度の収入増加がある程度で、あまり子育ての現場において変化をもたらすような制度ではありませんが、制度として決まった以上は、医療保険料増額を受け入れ、家計の使途を今一度見直して合理化する必要があります。
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