熟年離婚において最初に検討すべき事項
熟年離婚が増加しています。熟年離婚は、子どもに関する争いをせずに済む点や、お互いそれなりに貯蓄を有しているケースが多い点等において、離婚後の生活は深刻でないケースも多いですが、逆に、離婚後の就労が難しく、生活原資の確保が困難なケースも多いです。本稿では、こうした熟年離婚について、検討すべき点を優先順位をつけて整理したいと思います。
まず何より終の棲家
最も優先順位の高い事項は住居です。年齢的に引っ越し作業はつらく、離婚後の住居が終の棲家となる可能性は高いです。
おそらく熟年夫婦は、一方が住宅ローンを組んで持ち家に住んでいるケースが多いと思われます。30・40代の離婚と異なり、住宅ローンの残高は減っていますが、建物の老朽化も進み、資産価値は下がり、修繕費用がかかるものも多いでしょう。
その家に住み続ける人もそうでない人も、まずはその住居の資産価値を把握すべきです。そこに住み続ける人にとって残ったローンを支払いながら、さらに修繕費用もかかり、建物売却もままならないというのでは踏んだり蹴ったりで、終の棲家には程遠いです。逆に、そこに住まない側においては、その建物に資産価値があるのであれば、財産分与の材料となりますし、それよりも自身の住まいを決める必要も高いです。
財産分与は証拠が9割
老後の生活資金の確保が至上命題となる熟年離婚において、財産分与が離婚の成否を分ける重要なポイントとなります。熟年夫婦となると、思わぬ高額の財産を有しているかもしれませんし、そうでないかもしれません。これは証拠に基づいて決まります。衝動的に離婚するのではなく、離婚協議を始める前にきちんと相手の財産を調べ、必要な証拠は押さえておくべきです。この段階で弁護士に相談するのも有意義です。
積年の我慢が慰謝料に結びつくかも
モラハラは、離婚原因としても慰謝料の発生原因としてもなかなか裁判所で認定されにくいです。それは、「でもこれまで同居できたんだから我慢できる範囲内だったんだよね」で済まされがちだからです。しかし、熟年離婚だとこうはいかない場合があります。数十年にわたるモラハラを立証することで、長い間にわたって辛い思いをしてきたとして、慰謝料が認められるケースも増えているからです。長年我慢してきたことはきちんと主張し、慰謝料をとれるよう試みる価値はあります。
忘れてはならない年金分割と子どもの居場所
忘れてはならないのは年金分割です。婚姻期間が長いと年金分割の金額も大きくなります。リタイア後の貴重な収入源ですので、しっかりと請求すべきです。
そしてもう1つ大事なのは子どものこと。成人して独立したとしても、正月などは親元に戻りたいものです。また、子どもと定期的に接点を持つことで孫の顔を見られたり、将来的に介護を引き受けてもらえるかもしれません。熟年離婚では子どものことを決める必要はありませんが、子どもの帰る場所はきちんと残してあげるべきでしょう。
まとめ
以上のように、熟年離婚ではいくつかの重要事項に絞って深く準備する必要があります。
当研究所では離婚案件に経験豊富な弁護士・CFPが熟年離婚特有の難しさを丁寧に解きほぐします。下記よりお気軽にご相談ください。
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