後継者が早期になすべきこと
中小企業では、正常でない実態となっていることがしばしばあります。事業承継によって経営者が変わったタイミングはこれを正すグッドタイミング。できる限り早期に、会社の実態を把握し、正常でないものは正すことが必要です。具体例をあげると、以下のようなものがあります。
- 過度な安売りをやめ、適正価格での販売を徹底する
- 各種ハラスメントの撤廃等、法令等遵守の徹底
- 年功序列による弊害の除去
- 給与に見合った働きをしないベテランに対する減給または退職勧奨
- 取引先の精査(先代の個人的関係による取引先よりも、自社に得になる取引先選定)
- 契約書や規定類の作成の徹底
- デジタル化の推進
先代がすべきこと、すべきでないこと
事業承継を成功させるためには、先代はまず何より円滑な承継に協力しなければなりません。そのために具体的にすべき事には以下のようなものがあります。
- 取引先へ同行して取引継続をお願いする
- 従業員への事業承継について丁寧に説明する
- 当面は会長として企業に残り、事業運営を補佐する
- 事業活動上生じた混乱を鎮め、現場の不満の聞き役を務める
これに加え、事業承継は企業の正常でない状態を正す機会でもあることから、後継者による正常化行為をサポートする役割も求められます。しかし、これは自分のやり方が間違っていたと指摘されるようなもので、決して心地よいものではなく、また、既得権益を奪われるのは避けたいと、逆方向に心理的に働きがちです。例えば、実質的に働いていないが、親戚を役員に連ねて報酬を支払っているような場合、間違いなく後継者はこの先代の親戚を解任すべきですが、「生活に困るから役員に残してくれ」と、先代が後継者に要求するようなケースはしばしば見かけます。
後継者による企業の正常化行為を積極的にサポートまではできないにせよ、このように妨げる行為はゼ体にしてはなりません。もし、何らかの事情で、「正常でない」状態を維持する必要があるのであれば、承継前にきちんと後継者候補に説明のうえ、文書で、その状態を当面維持することを確認しておくべきです。
従業員がすべきこと、すべきでないこと
従業員は何より、事業承継の前後で、変わらず事業を円滑に進めることがミッションです。そのうえで、事業承継の前後で変わることは後継者が決めますが、その内容が「改悪」であるならば、後継者が十分に現場を知らない可能性があるため、丁寧に進言すべきです。
他方で、後継者がやろうとしていることが企業の正常化行為である場合、現場の従業員にとっては、多くの場合、負担の増える変化になることが多いと思われます。しかし、それが、「改正」であるならば、現状を維持したいという思いのほうが間違っていると諦めて従う必要があります。以下のような行為は会社への造反であり、絶対になすべきではありません。
- 既得権益を強硬に主張する
- 退職をほのめかして後継者に撤回を求める
- SNSで不満をぶちまける
- 退職したうえで、悪評を広める
どうしても譲れないものがある場合、先代に相談のうえ、先代から後継者に説明してもらうのが一般的です。
整理
以上を整理すると、事業承継前には、事業活動全体を丁寧に見直し、正常でない部分を抽出してこれをどう正すかを整理することが必要です。そして、その正常化行為に抵抗があるのであれば、事業承継前に先代と後継者の間で協議し、結論を書面に残す必要があります。
このような判断においては、法律・会計・ITなど様々な情報を多面的にふまえ、企業への影響を検討する必要があります。
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