敷金・礼金・保証金0円物件の裏にある経営維持の難しさ

コンサルティング

時々みかける初期費用0円物件

店舗や営業所などの事業用物件の賃貸価格は、ファミリー物件よりも割高になりがちです。特に、初期費用をしっかりとる物件では、敷金や礼金、保証金が数ヶ月分要求されるケースもあり、契約に当たって月額賃料の何倍もの費用を支払わなければならない案件も多いです。
そのため、初期費用を抑えたい方は、月額賃料よりもついつい敷金などの方を優先的に見てしまう方も多いのではないかと思います。
ここで、時々、こうした初期費用が0円の物件を見かけます。ぱっと見で明確にお得なのですが、不動産賃貸ビジネスを考えると、初期費用0円ではなかなか収益確保が通常は難しいため、「何か裏があるんだろう」ということが、分かる人にはわかります。
そこで本稿では、こうした初期費用0円の物件の背後にどのような事情があり、契約に際してどのような点を確認し、対処すればお得な契約を締結できるかを整理します。

看板がかかったまま、剥がしたままの物件

初期費用0円の物件の背景として、「早く入居者を見つけて賃料収入を得たい」ケースや、事故物件のケースがあります。このうち、前者は、通常は収益性が悪いため、家賃の方を高めに設定して帳尻合わせしている場合があるため、家賃の相当性を確認すべきです。また、後者はそれほど件数は多くなく、通常はきちんと重要事項説明で情報開示してもらえるため、自身で調査すべきということはありません。
町中で看板がかかったまま、あるいは、看板を剥がしただけで雑に退去したと思われる物件を目にしたことはないでしょうか。廃業したコンビニなどがわかりやすい例ですが、中を見るとぐちゃぐちゃで、とてもすぐに利用できる状態ではないことが多いです。
敷金や保証金はこのような物件をきれいにするために活用するために前払いを受けるものですが、そうした清掃などをせずに現状のままで引き渡して借主が好きに片付けて使ってくれ、という契約であれば貸主は余計な費用を支払わずに済みます。これによって、初期費用0円の物件の提供が可能となるわけです。

現状復帰費用が支払えず破産・夜逃げ

廃業したコンビニの例を挙げましたが、通常の賃貸借契約では、借主が退去する際、私物はすべて撤去し、壊した備品や、剥がした壁紙などは元に戻す必要があります。これを原状復帰と言います。原状復帰は借主の契約上の義務なのですが、経営の悪化した企業や事業主はこうした原状復帰を業者に依頼する資金をもはや有していないことが往々にしてあり、その結果、原状復帰をしないまま、夜逃げしたり、破産してしまうケースはよく見かけます。看板だけ外し中は色んなものが散らかっている元コンビニなどはその最たる例で、そうしたケースが一定確率で発生するからこそ、数か月分の前金を受けることは不動産賃貸ビジネスにおいて必要不可欠で、これがない契約は怪しいわけです。

気にしない人にはお得

こうして初期費用0円物件は、原状復帰がされていない物件が多いのですが、気にしたい人は気にしないため、契約を前向きに考えられます。

事業を始めようとする方は、通常は事業開始の数か月前に物件の引き渡しを受けた上で、事業所としてリフォームして利用します。そのまま現状有姿で、机や複合機を置いて利用するわけではありません。そのため、現状有姿からリフォームするか、前の借主が出て行ったままの状態からリフォームするかでは、後者の方が不要品の撤去費用などが余分にかかるものの、その分、敷金などの初期費用が安くなるのであれば、トータルコストは安くなることがあります。ここは、個別に自分で計算して損得勘定する必要がありますが、引き渡し時の状態があまり気にならず、リフォーム時に過分の費用がかからないのであれば、初期費用0円物件はお得なのです。

内部留保のデッドラインを決めておく

最後に、無責任な夜逃げ・破産をしてしまわないよう、その対策を説明します。原状回復のためには、物件の規模や態様にもよりますが、通常は数か月分の賃料相当額程度の費用がかかります。まとまった費用になるため、経営悪化がある程度進んだ状態でこのことに気づいてももうその資金を用意することができないケースはしばしば見られます。
そうならないためには、内部留保や借入限度額に特に注意し、一定のデッドラインを決めておくことが必要です。そのデッドラインを超えるということは経営が傾きかけており、一度経営が傾くと、経営はどんどん悪化するばかりで逆転は起きにくくなっていきます。
そのため、周囲に迷惑をかけないためには、設定したデッドラインを超えたら潔くその事業から撤退する判断が必要になります。

まとめ

初期費用0円の物件はそこだけ切り取ればお買い得ですが、それなりに裏があります。しかし、決して事故物件というわけではなく、賃料の高低や事業開始までに必要な工事の工期などをふまえて収支管理を計算すればお得かそうでないかは、一般人でも比較的容易に判断することはできるでしょう。そして、物件を借りる以上は、引き際を決して見誤ってはいけません。
当研究所では、不動産取引経験の豊富な弁護士・公認会計士・CFPが御社の不動産取引・活用業務全般をワンストップで対応することができます。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました