悪質業者に騙されないために事業承継で用心すべきポイント

相続・事業承継

M&A型事業承継でトラブル増加

事業承継では後継者を探すことが大変ですが、やっと見つかった後継者が実は詐欺師だった、というケースがしばしば報道されています。
主にM&A型の事業承継で、前経営者との約束が守られないまま、現預金や重要な資産だけ抜き取られて短期間で廃業に持ち込まれるようなケースが発生しています
事業承継は経営者として最後の大事な決断。それを無下にされた際の無念さは計り知れません。そこで本稿では、そうしたトラブルに巻き込まれないよう注意すべきポイントを解説します。

M&Aの対価は(資産ー負債)の時価がベースだが・・

M&Aの対価の算定方法はいくつかあるのですが、最もオーソドックスなのは(資産ー負債)の「時価」です。簿価は純資産の部の残高ですが、利益を上げている企業には簿価純資産以上の価値がある可能性は高く、シンプルに考えた場合、時価純資産で算定することになります。
この金額でM&Aが成立した場合、買手はのれんの計上が不要で、比較的お買い得な取引で、通常はこの時価純資産よりもかなり大きな額で商談が進むことが多いです。
ここに、狙われる企業の要素が見えています。①時価にすると化ける無形資産がある②現預金が多い③負債よりもはるかに資産が多い、といった企業を買収すればそうした資産を有効活用できますし、負債は倒産手続で消せばよいと考える輩は少なくないのが現状です。

契約は履行されないと疑え

M&Aにあたって、前経営者を顧問として引き続き事業に関与してもらったり、従業員の雇用を守ってもらったり、様々な要望が前経営者から後継者に伝えられ、後継者がどこまで受諾できるかを判断材料に後継者選びをする方がいます。理にかなった手法で、当然、合意内容は契約書に明記すべきなのですが、契約書に明記すれば安心なのではなく、契約書に明記しても履行されない可能性は低くありません
それは、契約違反時のペナルティを適切に設定することが難しいからで、悪質業者は、間違いなくこの弱点をついてきます。

後継者に求める内容を順位付けしてから交渉する

M&Aに当たっては、非常に多くの情報を整理するため、前経営者が見落としている内容や、順位付けがはっきりしない事項もたくさん出てきます。こうした内容は、なかなか一人で全部判断するのは難しく、優秀な弁護士が側にいれば教えてくれるかもしれませんが、なかなか信頼できる相談者には巡り合えない可能性も高いです。
そこで、交渉に入る前に、自分は事業承継で何を達成したいか、自社の何を守りたいかをきちんと順位付けして整理することが不可欠です
これができていれば、優秀だが意向がかみ合わない相手の違和感に気づけるでしょうし、逆に第1感は対象外だったものの、話してみると実は向いている方向が一緒である人にも気づけるでしょう。

事業承継は早めに準備。そして数多くの選択肢の検討を

事業承継で悪質業者に騙される企業は、あまり多くの選択肢を考えないまま急いで決断してしまった例が多く、急いで決断した背景には、事業承継の準備を始めるのが遅かったという不安やプレッシャーがあると考えられます。
特にM&A型で事業承継する場合、売買価格以外の定性的な側面で誰が良くて、誰が不適格であるかなど簡単にわかるわけがありません。
そこで十分な数の選択肢を必ず検討すべきですし、そのためには、早めに準備を始めて十分な時間を残すことが不可欠です

まとめ

事業承継は企業の規模を問わず、非常に取り扱う情報が多く、判断に困る場面が多々あります。そこで後悔する決断をしてしまわないよう、早めに準備を始めるべきですし、信頼できる士業の助言者を見つけておくべきです。なぜ士業かというと、所属会による懲戒制度があるため、それのない専門家よりも高い倫理観を備えているからです。
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