悪質リフォーム会社を適正に管理監督するには?

コンサルティング

悪質リフォーム会社が少額案件で跋扈

警視庁は今月、「スーパーサラリーマン」と名乗る悪質リフォーム会社の運営者を建設業法違反で逮捕しました。建設業法では一定以下の契約であれば国土交通省や都道府県知事の許可を得ずにリフォーム業務を行えることから、1つの契約を意図的に小さい単位に細分化して契約することで、この規制を潜脱していました
「行政はもっと厳しく取り締まれ」という声も聞こえてきそうですが、建設業界には零細事業者も多く、あまり規制を厳しくするのが困難であるという業界特有の課題もあります。では、こうした悪質な業者をどのように管理監督していけば良いでしょうか。本稿では、悪質リフォーム業者の監督のあり方をお整理するとともに、こうした事業者を利用する側が、事業者を懐疑的に見て自衛する必要性が高まっていることを説明します。

500万円の壁

建築業法では500万円未満の契約については、国土交通省や都道府県知事の許可を得ずにリフォーム等の建築作業の請負を行うことができます。一方で消費者相談に寄せられた苦情の大半が500万円以下の契約に関するものだとも報道されています。
許可事業者は違反行為をすれば許可された立場を失ってしまうため、必死でルールを守ろうとします。一方で500万円未満の契約であれば許可は不要で、そうすると、悪質業者が意図的に契約を小さい単位に細分化して許可を受けずに営業しようとするケースが増えてしまいます。違法行為を行っても失うものがないため好き勝手することができ、それが500万円未満の契約についてのトラブル増加という統計データにつながっており、まさにこの「500万円の壁」をどう解決すべきかは大きな社会課題となっています

一人親方の負担増加

では、この500万円の壁を低くすればよい、かというと、そう簡単な問題ではありません。建築業界ではいわゆる一人親方の割合が多いです。こうした一人親方は日々の仕事をこなすのに手一杯で、帳簿整理などまですべて完璧にこなすためには相当な負担がかかってしまいます
仮に500万円の壁を200万円にまで引き下げると、200万円以上の仕事を請ける事業者はすべて許可手続きに服し、適性に帳簿などを整理して監督官庁などに報告する必要があります。一人親方の事業者は、こうした事務作業にも対応するか、それとも200万円以上の仕事は受けないかを迫られ、前者は手続の負担が月に平均140万円ほど増加し、後者は売上が大きく下がる。どちらに転んだとしても今より良い状況には向かわないという苦しい状態にあることから、この壁を下げることには反対意見も多いです。

行政が全社を管理監督するのが原則であるが・・

許可制や認可制の仕事は監督官庁である行政機関が管理監督するのが一般的です。しかし、建築業のようにあまりに業者数が多いと、監督する行政庁側の人手も足りませんし、事業者に多くの書類の提出を促しても、監督官庁側も十分に目を通すことができず、監督行為が形式的になりがちです。
悪質事業者を業界から排除しようとするのであれば、こうして監督の対象となる事業者の範囲を広げ、監督行為も実効化する仕組みが必要ですが、それはなかなか簡単ではありません。そこで、この相反する要素の折り合いをどうつけて、どう悪質事業者を監督していくべきかは、まだまだ知恵をしぼっていかなければならない難しい問題です。

入口は緩めてペナルティを厳格にする

例えば、飲食業界もたくさんの事業者がいますが、最初は厳格に監督はせず、食中毒などの問題を起こした事業者に対して、営業停止などの厳しいペナルティが課されます。弁護士業も事業活動を行うためには、資格だけ有すればよく、悪質な活動をした方だけに懲戒手続が行われます。
建築事業者も対象事業者数が多すぎるため、監督の手が回らないというのであれば、入口段階では審査や規制は緩やかに設定し、問題を起こした事業者に対するペナルティを厳しく行うことで、事業者監督のメリハリをつけることができると考えられます。もちろん、代表者や屋号を変えれば別事業者として復活できるというのでは意味がありませんので、ペナルティを犯した方の「ブラックリスト」はきちんと整理・公開した上で、違反事業者の退場を促していく制度がバランスが良いように思います。

まとめ

リフォームなどの建築業は、建築資材の高騰や、人手不足などにより業界として厳しく、値上げや工期延長の要望が高まっています。しかし、顧客側からすれば少しでも良い条件で契約したく、ついつい甘い言葉につられて悪質事業者に狙われてしまいがちです。そうした顧客の保護は重要な社会課題ですが、水際で食い止めるには監督官庁のリソースが全然足りない状況であるため、まずは違反事業者を追い出す仕組みを確実に講じたうえで、個々人が違法な事業者や悪徳事業者に敏感になり、甘い言葉に騙されていないか、契約条件などを懐疑的に見る姿勢が不可欠だと考えられます。
当研究所では、こうした悪質事業者との取引について、お早めに弁護士に相談することをお勧めしております。早い段階で相談されれば解決策を見いだすことも比較的しやすい反面で、相談が遅れると既に手遅れであるケースもあります。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました