離婚に至らざるを得ない「性格の不一致」ってどんなもの?【弁護士×CFPが解説】

離婚

離婚原因第一位は「性格の不一致」

日本における離婚原因の中で最も多く挙げられるのが「性格の不一致」です。裁判所の統計資料や各種調査でも、夫婦が離婚に至った理由として真っ先に挙げられるのがこの項目です。しかし、ここで問題となるのは「性格の不一致」という言葉の曖昧さです。実際にどのような状況を指すのかがはっきりせず、当事者以外からは理解しづらい面も多いです。
夫婦である以上、もともと全ての価値観が一致していることは稀であり、誰しも多少の不一致を抱えながら生活しています。例えば、食事の好みや休日の過ごし方、金銭感覚の違いなど、日常的な場面で小さな不一致は避けられません。それでも多くの夫婦は話し合いや妥協を通じて関係を維持しています。では、その中で「離婚に至らざるを得ない」と判断される不一致とは、いったいどのようなレベルのものなのでしょうか。
「性格の不一致」という言葉は、時に便利なまとめ言葉として使われることがあります。本来ならば詳細に説明すべき具体的な理由――例えば生活習慣の極端な違いや、相手の言動に対する継続的な不満――を一括して表現するものとして機能しています。そのため、外から見れば「単なるわがままではないか」と思われるケースもありますが、当事者にとっては耐え難い問題であることも少なくありません。
そこで重要なのは、「誰にでもある程度の性格の不一致は存在する」という前提に立ちながらも、それが日常生活を根底から揺るがすレベルに達したとき、離婚という結論に至るという理解です。そこで本稿では、夫婦関係における性格の変化や不一致の受け止め方、話し合いによる解決の可能性、介護や子育ての観点からの限界点などを踏まえて、離婚判断に至る不一致の実態を考察していきます。

性格や環境は日々変化することをまず受け止める

「性格の不一致」は、結婚してしばらく経ってから突然生じるものだと考えがちですが、実際にはそう単純ではありません。人間の性格は固定されたものではなく、日々の経験や人間関係、環境の変化によって少しずつ変わっていきます。結婚当初には気にならなかった行動が数年後には受け入れがたいものに変わることもあり、これは誰にでも起こり得る自然な現象です。
例えば、若い頃は社交的で友人と頻繁に集まることを好んでいた人が、年齢を重ねるにつれて家庭中心の生活を望むようになることがあります。その逆に、結婚後に交友関係を広げて活動的になる人もいるでしょう。また、職場環境の変化や仕事の責任の重さによって、以前よりも神経質になったり、逆に楽天的になったりするケースもあります。このように、人は生涯を通じて変化し続ける存在です。
生活環境の変化もまた、性格に影響を及ぼします。子どもの誕生、親の介護、転勤や引っ越しといった出来事は、夫婦の生活リズムや価値観に大きな影響を与えます。例えば、都市部から地方へ転居すれば生活習慣や人付き合いの仕方も変わり、それに応じて夫婦の役割分担や考え方も変わっていきます。
したがって、結婚生活において重要なのは「相手の性格は変わり得る」という現実を受け止める姿勢です。「結婚当初の性格を基準に相手を評価し続ける」ことは現実的ではなく、むしろ摩擦の原因となります。相手も自分も変わり続けていることを理解したうえで、どこまで受け入れられるかを考えることが、性格の不一致を深刻化させないための第一歩となるのです。

変化を認識し、話し合う

性格や生活環境の変化を認識したら、次に必要なのは夫婦間での対話です。例えば、夫が仕事で多忙になり、帰宅が遅くなることが常態化したとします。妻からすれば「家庭を顧みない」と不満が募りますが、夫からすれば「仕事を頑張って家計を支えている」という意識が強いかもしれません。このように視点が食い違うことで、愛情を感じにくくなる状況が生まれがちです。
こうしたとき、配偶者はまず話し合いを提案することが望ましいといえます。冷静に状況を伝え合い、お互いの立場を理解し合うことで、解決の糸口が見つかる場合もあります。例えば、休日だけは必ず一緒に過ごす時間を確保する、あるいは家事の一部を夫が分担する、といった具体的な改善策を導入することも可能でしょう。
しかし、話し合いをしても改善の余地が見当たらない場合があります。この場合、関係改善の負担は片方の我慢に依存することとなります。
問題は、この「我慢」の度合いです。人によって忍耐力や許容範囲は異なりますが、長期間にわたって一方だけが我慢を強いられる関係は健全とはいえません。相手に対して尊敬や感謝を感じられなくなり、さらには怒りや無関心が支配するようになると、夫婦関係は実質的に破綻に近づきます。最終的に、その我慢が自分の心身を蝕み、生活の質を著しく損なうと判断したとき、離婚は避けられない選択肢として浮上してきます。

介護や助け合いの観点

熟年離婚が増えている背景には、介護や助け合いの問題があります。結婚生活が長くなると、いずれ夫婦のどちらかが病気や加齢によって介護を必要とする段階に入ります。このとき、性格の不一致が小さな摩擦にとどまるのか、それとも「この人の介護は絶対にできない」と考えるほどの重大な問題になるのかが、離婚判断の大きな分岐点となります。
例えば、日常の些細な言動――家事に対する不満や金銭感覚の違い――は、若い頃であれば「仕方がない」と目をつぶることも可能です。しかし、将来の介護を思い描いたときに「この相手に支えられることは期待できない」「自分が相手を支えることは不可能だ」と感じれば、関係を続けるのは難しいと判断する人が多いのです。介護は長期的で身体的・精神的に大きな負担を伴うため、そこに我慢や妥協を持ち込むのは現実的ではありません。
実際、熟年離婚を選ぶ人々の多くは「老後をこの相手と過ごすことを考えると耐えられない」という理由を挙げます。これは単なるわがままではなく、長年の不一致が積み重なった結果としての結論です。逆に言えば、若い世代が「性格の不一致」を理由に離婚を検討する際には、本当に我慢できない不一致なのか、それとも一時的な摩擦なのかを慎重に見極める必要があります。
このように、介護や助け合いの観点から性格の不一致を考えると、単なる価値観の違いを超えて「人生の後半をどう生きるか」という深刻なテーマに直結します。夫婦関係を続けるかどうかの判断は、老後の生活設計に大きな影響を及ぼすため、よりシビアな基準で下されるのです。

子の生活の考慮、一人になること

子どもがいる夫婦にとって、性格の不一致による離婚はさらに複雑な問題を伴います。不倫やDVといった明確な離婚原因があれば別ですが、性格の不一致の場合、親としての責任が判断を難しくさせるのです。
まず考慮しなければならないのは、子どもの生活への影響です。親の離婚は子どもの心理や進学、友人関係などに直接的な影響を及ぼします。家庭環境の変化は、子どもの成長過程に大きな負担を与える可能性があるため、多くの親は離婚を慎重に考えるのです。たとえ夫婦関係が冷え切っていても「子どものために我慢しよう」と決断するケースが珍しくないのはそのためです。
また、離婚後に一人で生活していくことへの不安も大きな要素です。経済的に自立していない場合、離婚後の生活は厳しいものとなります。特に専業主婦(主夫)であった場合、急に収入を得る必要が生じることは大きなハードルとなります。精神的な孤独感も無視できません。長年連れ添った相手と別れ、一人で生活を再構築することには相当の覚悟が必要です。
そのため、性格の不一致を理由に離婚を検討する際には「我慢できない」と感じる度合いを、子どもの生活や一人になるリスクと天秤にかける必要があります。もし不一致が日常生活に支障をきたすほど深刻で、子どもに悪影響を及ぼすと判断される場合、むしろ離婚を選んだ方がよい場合もあります。しかし、単なる意見の相違や生活習慣の違い程度であれば、子どもの安定を優先して工夫を重ねる方が現実的かもしれません。
離婚とは単なる夫婦二人の問題にとどまらず、子どもや家族全体の人生に影響を及ぼす重大な選択です。性格の不一致を理由に踏み切る場合には、我慢の限界だけでなく、その決断がもたらす波及効果まで冷静に見極める必要があります。

まとめ

性格の不一致は、離婚原因として最も多く挙げられる一方で、その内実は多様であり、当事者以外には理解しにくい面を含んでいます。人の性格や環境は常に変化し、それに伴って夫婦間の価値観や生活スタイルも変わっていきます。その変化をどう受け止め、どう話し合い、どう調整していくかが、夫婦生活を続けるかどうかの分岐点となります。
我慢を続ければ関係が成り立つ場合もありますが、その限界を超えると心身に悪影響が及び、生活の基盤そのものが揺らぎます。特に介護や助け合いの段階に入ると、「この人と老後を共に過ごせるかどうか」という視点がシビアに問われます。また、子どもがいる場合は、その生活や将来への影響を慎重に考慮する必要があり、離婚はさらに重い決断となります。
結局のところ、離婚に至らざるを得ない性格の不一致とは、「相手との関係を続けることで自分の人生や家族の人生に重大な悪影響が避けられない」と判断される状態を指すといえます。小さな不一致は夫婦にとって避けられないものであり、工夫や歩み寄りで解消可能です。しかし、我慢や調整ではどうにもならず、生活の根幹を揺るがす不一致に至ったとき、離婚という選択が現実的になってきます。
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