商標権に基づき校名変更
学校統合により新しい学校名をつける必要があるということで、姫路海城高校という名前で準備していたところ、東京の海城高校から商標権侵害の主張があり、校名変更を余儀なくされている、という報道がありました。
学校法人は営利団体ではありませんが、あまり変な新興校に類似名称を使われて学校の志願者が減ってしまうと致命傷となりかねないため、学校名を商標登録して、系列だと思われないよう対処しています。
本稿では、このケースを参照に、商標権侵害の基本と新しい名称のつけ方を説明します。
結合商標は「要部」を比較
複数の名称を合体させた結合商標はその「要部」を抽出して元の商標と比較対照します。
東京の海城高校は「海城」という商標を持っています。
姫路海城は、地名の「姫路」よりも「海城」が目を惹くと考えられやすいため、要部である海城が抽出され、両者は類似と判断される可能性が高いです。
地域名は「見ない」扱いが多い
前項では、校名から地名を除外して考えましたが、「地名」+「その他」の場合、一般的には地名は付随的な名称だと考えられやすいため、地名を無視して「その他」だけが抽出されやすいです。
しかし、これは絶対的なルールではなく、例えば「関東第一」と「福岡第一」。両者ともスポーツの名門校ですが、地名を無視して「第一」だけが抽出されるわけではなく、地名よりも順序を指す「第一」の方が弱いため、このケースでは抽出なく「関東第一」と「福岡第一」をそのまま比較対照して否類似という判断になるのではないかと思われます。
商標権を有しない場合、不正競争防止法による請求の可能性
先発の学校が商標権を有しなければ安全なのかと言うとそうではありません。
商標権を有しなくとも、全国規模で著名な名称であれば不正競争防止法により類似名称の使用が禁止される可能性が高く、実際にそうした裁判例もあります。
著名校は入学志願者が潤沢であることが経営上の大きな強みでありこれを害されることをかなり強く嫌います。
そのため、ネットで検索して上位に「スポンサー」以外で簡単に出てくるような名称の使用は非常にリスクが高いと考えられます。
地域名+既存名称はほぼ不可。つまり、新校名はかなり限定される
商標の比較では地名は除外されやすく、要部にしぼったらどこかで誰か別の方が使用している。すなわち、後発では新名称はかなり絞られるため、子どもの名前は重複できても、学校名や新商品名は重複できません。
そのため、安易に名称を公募して良さげなのを選ぶ、という手順はお勧めできません。
まとめ
以上の通り、新名称をつける際には、何か良い名称を思いついても、その冠に地名をつけるだけでは権利侵害は免れず、結局、新しい名称は、これまで使っている人の少ないかなりマイナーなものに限定されてしまいますし、ここを強引にこじあける方法もありません。
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