商店街や大箱ショッピングセンターの閉鎖が相次ぐ
地域の商店街の苦境は様々なところで報道されていますが、最近では大型デパートの閉店も増加しています。特に地方の駅前のデパートの閉店件数の増加が顕著で、これは建物の耐用年数の経過に加え、オンライン販売などを通じて地方でも都心部へ行かずに必要なものを購入できる仕組みが広まったことも理由として挙げられます。
大型ショッピングセンターの閉鎖は地方だけの問題ではなく、東京では聖蹟桜ヶ丘、大阪では心斎橋のオーパが閉鎖を発表しています。
大阪であれば梅田の阪急やヨドバシカメラは盛況で、決して大型ショッピングセンター自体に逆風が吹いているわけではありません。そこで本稿では、こうした大型ショッピングセンターや商店街の今の設備を活かしながら、どのように地域の住民のニーズを充足して共存していくか、その方策を紹介していきます。
少子高齢化と一極集中
商店街や大型ショッピングセンターに我々が行くのは、大きく2つ。「買う種目が決まっている場合」と、「何を買うか目的が定まっていない」場合です。前者は、例えば電灯を買いたい、安い洗剤を買いたい、今夜のおかずを買いたい、と言うように、漠然とあるグループの商品を買いたい場合に、ぶらりと商店街やショッピングセンターへ行って色々見ながら買う物を特定するケースです。後者は何を買うか決まらないまま、ぶらぶら歩いて欲しいものがあれば買うというケースです。いずれも、商店街などに行けば選択肢があるから足を運んでいました。
しかし、今では選択肢はスマホでいくらでも検索でき、地方の店はコストカットのため、売れ筋商品以外を店頭に置かなくなりました。また、少子高齢化で客数が減少し、「そこに行けば何でもある」が売りの店舗は都心の中心部でまるでブラックホールのように集客するため、地方の「何でも屋」には人がなかなか行かなくなっているのが現状です。
ファミリー層やインバウンドを引き込む導線
地方の商店街やデパートは、真っ向勝負すれば都心部の大型店には勝てないのですが、すぐに諦める必要はありません。顧客を呼び込む導線を考えれば良いです。
例えば、地方の大型店舗が不振であるのは、大手であるイオンでも例外ではありません。イオンは比較的収入の多い住民層のいる地域では堅調ですが、収入に余裕のない層はイオンにはなかなか近づかず、採算性の観点からテナントの離脱が進み、「歯抜け」の店舗も増えています。
そんなイオンは、顧客を維持するために、例えば休日は子ども向けのイベントやキャンペーンを提供してファミリー層の取り込みを行ったり、海外のイオン店舗と提携してインバウンド客の足をイオンに運ばせる取り組みなどを行っています。このように、周辺にどんな人がいるかをリサーチし、そうした方々を商店街などに向かわせるしかけ作りがまずは大事です。
一部を倉庫・物流の拠点として活用
商店街やデパートは、せっかく「大きなキャパ」という強みを持っています。しかし、顧客の総数が減少しており、これを都心部の大手店舗と取り合うのであれば顧客数自体は減少傾向になるのは止められません。
ここで、アメリカのとある取り組みが参考になります。小売店舗の最大のライバルはネット通販ですが、ネット通販事業を行うためには、商品を保管する倉庫と配送の担い手が必要です。そして、ネット通販の収益性を大きく左右するのが物流コストで、こうした倉庫はできる限り顧客に近い場所に集約されていることが望ましいです。顧客に近い場所にあることで配送が効率化できますし、集約されていることで仕分けの時間や手間を省略することができます。
つまり、商店街や大型施設のすべてのスペースが小売店で埋まらないのであれば、小売店スペースを限定し、余った領域を倉庫として物流の拠点として活用すれば、地域住民に必要なものがすべてその拠点を通過することになり、地域住民にとっての重要性が回復します。
「何でもある」は小さい商店街でも実現可能
例えば小さい商店街で考えてみましょう。シャッター街で閉じている店が多いとどんどん人は遠のいていきます。ここで、その商店街の寝具屋が閉店したとして、地域の人は寝具を購入するために都心に出るか、通販で購入する必要が生じます。その際に、閉店した寝具屋を商店街に足りない種類の店舗の商品物流倉庫として活用すれば、地域住民は、商店街で買えないものをネットで注文して、商店街の倉庫で受け取ることにより、個別配達よりもはるかに安く必要なものを購入することができます。こうして人が商店街に足を運べば、既存店の商品の追加購買も期待でき、商店街の再発展の足がかりにすることができます。
商店街やデパートに人が行く理由は「そこに行けば何でもあるから」ですが、ネット販売の弱点である個別配送の遅れやコストを逆手にとって商店街やデパートをそうした商品の物流拠点とすることで、現代流に「何でもある」を実現できるのです。
まとめ
大箱施設は、人が多い時期に大活躍して、人口減少の現在ではお荷物になりがちですが、まだすぐに廃止を決断するのは早く、可能な範囲で集客を維持する施策はありますし、空いたスペースを物流の拠点として活かす方法もあります。あまり一人で抱え込まないで専門家に相談することが望ましいでしょう。
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