商標権はわかりやすそうで奥が深い
知的財産権法は構成要件に当てはめるパズル的な法律で、その中でも商標権は比較的取り扱う対象が我々の日常に近い素材が多いため親しみやすそうなイメージを受けます。
しかし、いざ商標権の紛争が起きると、意外に、「負けそうだと思ったのに逃げ切れた」「全然大丈夫そうだったのに法律違反になった」といった予想外の結果がたくさん出てきやすい法律でもあります。
そこで本稿では、商標権侵害に意外にならないケースと意外になるケースを紹介します。
似ているかどうかは奥が深い
先行商標と自己の商品等につける表示。似ているかどうかは誰でも意見は出せますが、本当に似ているかどうかの判断は専門家でもかなり難しいです。
まず、複数の要素が合体した結合商標の場合、そこから「要部」と言われる特に注目を集める部分を抽出する作業が発生しますが、これが意外に人によって意見が分かれ、知的財産高等裁判所の判例にも異論がつくことが時々あります。
また、似ているかどうかは①音②見た目③意味の3つの観点で分析しますが、その表示がどのような場面で使用されるかをふまえて、この3つを考慮する重要性の割合が異なってきますので、ややこしいです。
こうして「似ているから観念してたけど逃げ切れた」という方も少なくありません。
あらゆる商品に商標はとれない
商標出願に当たっては、どの商品・サービスで商標をとるかを限定することが必要です。「全分野でとりたい」のは理想ですが、使わない分野まである人が独占してしまうと、後の人が困るため一定の範囲内でしか商標はとることができません。
商標権の範囲は広い方がよいのでほとんどの方が目いっぱい広くとろうとするのですが、それでもある程度の分野は絞られてしまいます。そこで、表示自体はそっくりであっても事業分野が違うため商標権侵害を免れたというケースも多く発生しています。
知らなかったでは済まされない
多くの仕事は誰かの悩み事を解決するものではないかと思います。そこで、自身のサービスに「●●のお医者さん」といった名称を付けたらサービスの中身がわかりやすい、と考える方がいるかもしれません。しかし、多くの仕事が誰かの悩みを解決するものである以上、~のお医者さん、~ドック、~相談所といった名称はたくさん既に商標登録されています。
当然、他の方が既に商標登録しているとは知らなかった、という言い訳は通用しません。思わぬ権利侵害を生じないよう、新しい名称を使用する際には調べるか、商標の専門家に相談すべきでしょう。
商標権侵害ではなくても不正競争防止法違反があり得る
商標権侵害は商品分類が違って免れたとしてもそれで逃げ切れたわけではありません。まだ不正競争防止法違反の第二の矢があり得ます。
不正競争防止法は、都道府県レベルでのローカルな名称は対象外ですが、地域レベルで有名な名称は他者に使用させない効果を有します。
商標権では分類が違っても、その名称が地域レベルで有名なものであれば不正競争防止法で訴えられてしまいますので、こちらも名称を使用する前に有名な名称が使用されていないか確認する必要があります。
まとめ
商標権は以上のように、逃げれなさそうで逃げ切れたり、その逆であったりかなり難解な面があるため、ちょっとした新しい名称であっても商標の専門家に相談するのが望ましいです。
当研究所では、特許庁勤務歴のある弁理士・弁護士が貴方の商品・サービスに付ける名称の安全性について徹底的にサポートいたします。下記よりお気軽にご相談ください。
コメント