卒業アルバムのデジタル化が進む
卒業のシーズンが終わり、多くの卒業生は次のステージへの準備を進めている時期です。その中、昔ながらの卒業アルバムが絶滅の危機を迎えています。
理由を端的に言うと、手間対効果が全く割に合わないためです。卒業アルバムは製作にものすごく手間がかかりますが、紙のアルバムを配布しても、もらった瞬間は皆見るものの、数年後に振り返ってみる人はほとんどいないでしょう。また、芸能人の卒アルなどはネットで晒される対象となっており、かえってアルバム発行のデメリットも近年散見されます。
もともと先生が写真撮影していたものを、先生の業務多忙により、撮影を地元の写真業者に丸投げする学校が増えており、そのため、卒業アルバム編集を依頼せざるをえない面もありますが、こうなると卒業アルバムの必要性が怪しくなっています。
そこで本稿では、近未来、卒業アルバム製作が生成AIに任される可能性が高いことを論証します。
まんべんなく全員の写真を選別する無意味
学校行事では、古くは先生が、最近では写真業者がたくさんの写真を撮影します。一人ひとりの生徒は前に出たがる子もいれば引っ込み思案の子もいます。そのため、普通に写真を撮影していると前者の子ばかりの写真となり、偏ります。そのため、大量に写真を撮影したうえで、まんべんなくすべての生徒の写真を拾い上げるのが定番だったのですが、この作業、非常に手間がかかるうえ、ここを凝れば凝るほどアルバムとして違和感が強まってしまうという皮肉も生じていました。
「全員平等」は教育の基本ですが、実際には同じ宿題でもできる子とそうでない子とでは宿題をこなすことに捕らわれる時間が全然違います。無理に平等に合わせる必要性は後退しており、まんべんなく全員の写真を選出する必要性も低下しています。
他人に写真を買われない権利
昔ながらの学校では、撮影された写真を校舎に掲示し、どの写真を買うか選ぶ、という手続きがありました。これが今ではNGになりつつあります。全員をカメラに収めようと、たくさんとった写真の中には、当然、映りの悪いものや、タイミング悪く露出度の大きい写真が含まれる可能性が高まります。そうした「NG写真」は予め先生が省くこともありますが、省かれずに残ったものであっても、本人またはその親がNGだと感じる写真は残ってしまいます。すなわち、「自分が映った写真を他人に買われたくない」という思いは必ず発生し、そうした思いもきちんと調整しなければならないため、先生の負担はますます大きくなります。では、本人以外の画像にはぼかしをかければ良いかと言うと、生徒も誰と一緒に写っている写真が欲しいと言うため、調整は一層困難となります。
紙アルバムからスマホ視聴へ
さて、卒業アルバムは元々は紙素材でしたが、最近ではデジタル化、そしてスマホ視聴に変化しています。紙媒体であると、一々本棚から出してくるのも面倒で、全員が平等なので毎回見るところは限られ、感動も徐々に薄れていき、やがて全く見なくなります。
これがデジタルアルバムになると、スマートフォンにダウンロードしてベッドに寝そべりながら昔の思い出に浸ることができます。デジタルであるため、動画にしたり、音楽を挿入することもできるため、何度見ても飽きにくいコンテンツを作ることができます。
こうして、時代は紙で見ることからデジタル視聴に移行しており、演出を加えて飽きない仕組みを作ることも重視されているため、紙アルバムは次第に淘汰されて、デジタルアルバムをスマートフォンで見ることがどうしても主流になってきます。
生成AIを活用すればオーダーメイド化が可能
こうして、デジタルアルバムが一般化すると、ここまでに述べてきた紙アルバムの課題が解決されます。すなわち、生成AIを用いて個々人に適した卒業アルバムをオーダーメイドできるため、生徒の映った写真をまんべんなく選ぶ必要がなくなり、個々人が主役となるアルバムを作ることができますし、他の生徒が見られたくない写真も簡単に除外することができます。そのうえで、個々人の嗜好に合わせた音楽選定や動画演出も入れることができるため、一人ひとりの意向に沿ったオンリーワンのアルバムを提供することができます。卒業アルバムの貰い手としてはこちらが良いに決まっています。ただし、そうすると、写真撮影は誰がするの?という問題が再発し、写真撮影者がいなければアルバムも充実しないというパラドクスに陥ってしまいがちです。
まとめ
卒業アルバムは、負担を減らしたい学校教師と、写真需要の減少に抗う写真屋の意向が合致して、写真屋主導のアルバム発行が平成以降発展してきたところですが、現在では生成AIに外注するのが最善である可能性が高いです。それが、卒業生には一番ありがたいアルバムにはなりますが、写真がなければアルバムも成立しません。写真がどのような経過で作成され、誰が蓄積・管理するかも含めて全体的にベストな方法を模索する必要性は今もなくなっていません。
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