事業再生において、初心に返るべきところと返るべきでないところ

事業再生

スポンサー支援型の事業再生で最も高い再生失敗要因

コア技術や売れ筋商品は持っている。アクシデントで事業収支が悪くなったが、スポンサーから支援を受けて立て直せば必ず事業再生できる。このような案件はたくさんあります。再生できると信じさせてくれるため、スポンサーも協力を打診してくれます。ここまでは民事再生でも私的整理でも順調です。しかし、実際にはここから先に比較的早く再生計画が頓挫してしまうことがしばしばあります。そのケースを類型別に検討していきたいと思います。

顧客開拓は初心に返るべし、商品は信じよ

先に答えを書きます。事業再生をするならば、顧客開拓は初心に返って1から丁寧に取引を求めること、逆に商品・サービスに関しては、既存のものにあまり手を加えないことが大事です。以下で、ケース別に解説していきます。

円満であったはずのスポンサーとの関係が急に破綻

スポンサーからの資金流入を暫定的に取りつけ、その前提で事業計画書をあげたところ、スポンサーから撤退された、というケースは結構多いです。ここでの問題点を一言で挙げると「油断」です。

一度、再生会社となったことで、企業の信用は落ちています。信用が落ちるということは既存顧客の離散が起きているということです。そのような中で必死にすべきことは、再生活動を通じて何がどう変わり、どう取引先にメリットがあるかということをいかに取引先にアピールするかです。これはウェブサイトに書けば自動的に知られるというものではありません。

初心に返り、1から丁寧に集客活動をやり直さなければいけません

しかし、再生を模索する企業の役員としては、自社の商品・サービスに自信があればあるほど、「スポンサーがつけばもう大丈夫」と、油断しがちです。これをスポンサーは「危機感や必死さがない」と評価して撤退してしまいがちです。

再生計画が予想通りにいかない

スポンサーからの出資を受けて事業活動を立て直した。もう大丈夫だ、と思った矢先、再生計画と実態に大きな乖離が生まれて、早期に再生頓挫、というケースもよくあります。

こうしたケースでは、再生計画自体は達成可能なものだとして認可されたものの、現場が危機感を持って取り組まないため、失敗に終わったケースが多いです。失敗に終わった原因は前項と同様で、スポンサーからの支援を受けたから大丈夫だと油断し、既存顧客や潜在顧客へのアピールが疎かになっているケースがほとんどかと見受けられます。

商品・サービスと販促の違い

スポンサーから出資を受けられると決まった段階でその資金で新商品を開発しようと考える方もおられます。しかし、これは新事業同然で、これまでの商品・サービスへの信用を損なうおそれもあるため、まずスポンサーや裁判所から前向きな協力を得るのは難しいでしょう。

他方で、1度失った信頼をスポンサーからの出資を受けて体制を一新したというような場合、信頼を失っている以上、販促・顧客獲得活動は初心に返って丁寧に、地道に行うべきです。しかし、既存の商品・サービスに自信がある企業ほど、ここを疎かにして、折角の再生のチャンスを不意にしてしまうことが多いです。だからこそ、事業再生を志すならば、初心に返って、自社がどう変わったか、既存顧客と潜在顧客に丁寧に情報開示すべきなのです。

まとめ

以上のように、事業再生を遂行するうえでは、過去の栄光を捨てて、1から販促活動を謙虚に行うことが必須です。しかし、この危機感はなかなか組織内で伝わりません。
当研究所では、事業再生の前段階として、組織構成メンバーやスポンサーへの適切な接し方、変えるべき組織文化や意識傾向の指摘、再生計画遂行のための諸助言などをワンストップで対応しています。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました