セガがメメントモリの運営会社を提訴
ゲーム会社の紛争といえば、任天堂がパルワールドを訴えたのが記憶に新しいですが、さらに業界大手のセガが、メメントメモリというゲームの運営会社を提訴したという報道がありました。ゲーム開発には様々な仕組みを用いるため、ついつい気づかずに他者の特許権を侵害していることがありますが、「気づかなかった」は弁解にならず実質上無過失責任を負うこととなります。
このセガの件についてはメメントメモリ開発者側に、先行特許の調査不足があったのではないかと思われる案件で、本稿では先行特許調査のやり方や注意点を整理します。
ゲーム開発後に権利侵害が判明。ライセンス交渉中
セガvsメメントメモリの件ですが、ライセンス交渉中にセガが訴訟提起に至ったという時系列が明らかになっています。メメントメモリ側にセガの特許権侵害の認識がなければライセンス交渉には至らず、いきなり訴訟提起となるはずですので、この件は、ゲーム開発後にメメントメモリ側がセガの特許権を侵害している可能性に気づき、ライセンス交渉に至ったが、金額の乖離が大きいため、セガ側が訴訟に至ったものと考えられます。
もしこの通りであれば、この訴訟は、訴外でライセンス交渉をまとめて早期解決が考えられます。
最初の特許調査と留意点
メメントメモリ側も、ゲーム開発プロジェクトの開始時に当然、先行特許調査を行ったはずです。しかし、特許権は星の数ほどあり、そのすべてを網羅することは不可能です。また、タイムラグをおいて公開される公報もあるため、プロジェクト開始の段階では、いくら慎重に先行特許調査を行っても「100%大丈夫だ」という心証に至るのは不可能です。
プロジェクト意思決定前の調査と留意点
人間による先行特許調査には限界があり(おそらくAIによっても限界あり)、先行特許調査は継続的に行う必要があります。
当然、この間に自社のゲーム内容もどんどん改良されるため、改良された内容が他社の特許を侵害していないかどうかも慎重に分析する必要があります。
最も重要なのはプロジェクト採択の意思決定時。ゲーム開発完了後、その生産・販売プロジェクトの意思決定前であれば、特許権侵害の可能性があれば意思決定を延期して費用流出を回避することができます。ゲームが完成した段階で今一度、自社のゲームの要素を整理し、その内容の先行特許がないかを確認する必要があります。
シンプル化するからこそ容易想到
ゲームをたくさん売るためには、様々なユーザーが使いやすいよう、操作方法やシナリオなどをシンプル化することが不可欠です。開発段階で複雑な操作方法をどんどんシンプルにしていくことで、そうしたシンプルなゲーム要素であれば既に公開されていた、というケースが生じがちです。
ここで先行特許に気づいていれば操作方法を調整して先行特許権を侵害しないゲームに調整することも可能であるため、先行特許調査は重要です。
まとめ
ゲームに必ず様々な新製品開発は、不断の先行特許調査が不可欠で、これにより、不要な資金流出を回避することができます。
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