100%AIが作文する新聞
イタリアの「IL FOGLIO AI」という新聞が、人間は問いを投げかけるだけで文章はすべてAIが作成するという新聞を発行しています。昨今、生成AIの台頭により、AIに文章作成させるケースは増加しており、大学では生成AIによるレポート作成が問題となったり、こうしたブログ記事も私は自分で頑張って書いていますが、AIに作成させるサイトも増加しています。
生成AIが作文能力を有する以上、効率性は間違いなくAIによる作文が上です。では、今後、新聞などの記事やレポートはすべてAIが行うべきかというと一概にそう結論づけてしまうのは早計です。
本稿では、AIと人の仕事の比較を通じて、作文に関して人が今後どのような能力を伸ばし、AIとどう付き合っていけば良いかを紹介します。
切り口の提供と仕上げは人の仕事
上記のAI新聞ですが、文章はAIが作成するものの、最初に人が質問を入力する必要があります。すなわち、生成AIは自分で今、何が求められているかを探す能力は十分には有していません。また、こうした記事は仮に同じ内容であっても、その事実をどのような切り口で見せるかによって情報の受け手へのインパクトが全然異なります。そのため、記事のベースとなる切り口は人間が考え、提案する必要があります。
また、生成AIは作文できるものの、必ずしも読みやすい文章とはなっていないケースも多く報告されています。同じ内容の小説であっても、プロと素人が書けば明確に違いが出るように、文章を仕上げるプロの仕事も必要とされます。こうして記事作成の少なくとも最初と最後においては、人間が記事のクオリティを確保するために重要な役割を果たす必要があります。
現地取材のリアリティと希少性
新聞記事では現地取材が最も重要だと言われます。人が知りたい事実を入手するためには多くの困難を伴い、あまりに過激な取材がなされると他者の権利侵害が生じかねないため、プロの仕事としてルールを守り倫理観をもった対応が必要となります。
しかし、AIはオンライン上で取材を行います。そして、個別にルールを指定しなければ制限のない条件で取材を進め、他人のプライバシーを含む防犯カメラ映像を参照するなど、少なくとも倫理観を伴った取材は期待できません。
また、オンライン上の取材内容は偏ると想定されています。そのため、人による取材内容の方が適時性や信用性に勝り、読み手がリアリティを感じやすく、生成AIが記事作成の主体になればなるほど人による取材の希少価値も高まると考えられます。
感性・誠実性・地道な努力勝てる要素はいくつかある
こうして見ると、人がAIに勝てるものはいくつかあることが見えてきます。まずは記事の魅力を高めるために入口段階で適切な切りを選ぶ感性、次に倫理観を持って地道に足を運んで事実を調べる取材力、読みやすい文章を仕上げる力。我々は子どもの頃から日記を作成させられるなど、文章を作成する力を得るトレーニングを積んできたため、どうしても頑張ったその力を活用したいと思いがちですが、その領域ではAIには勝てません(なので、義務教育の教育方針が変わらなければならないと思います)。
自分が文章作成スキルがあるからそこで戦いたい、ではなくて、AIができない仕事、AIが持たないスキルを今からでも後発的に備えて明確に役割分担することが大事で、そうした分野はいくつかある以上、決して「AIに仕事を奪われる」ようなことにはならないのです。
高めあい、より良いものを創る
将棋の世界では形勢判断は圧倒的にAIが人を凌駕しています。では、人の棋士はいらないのか、将棋のタイトル戦は最新のAI同士の対戦がベストなのかというとそうではないでしょう。将棋を指す棋士は、今後規模は縮小するかもしれませんが、なくなることは考えにくいです。
将棋の棋士はAIによる形勢判断を活用しながら進化しています。AIを活用した研究により、戦術が進化し、過去に攻略されてしまった作戦が復活するケースも見られます。そうした進化した棋士の棋譜を見て、AIもさらに成長する。将棋の世界ではこうした人とAIがお互いに高め合って進化を続けています。こうして、人とAIの関係はいがみ合う関係であってはならず、適切に役割分担してお互いに高め合い、より良いものを創り出す関係であるべきです。
まとめ
AIが100%文章作成する新聞の取り組みは面白いものですが、これは新聞作成に関わる方やジャーナリストの仕事を奪う方向に作用するものではなく、人がその役割や磨くべきスキルを再考して、より良い価値を創り出すチャンスにしていくべきものだと考えられます。色んなところでAIが進出していますが、その度にAIを学び、自分の進む方向を修正しながら、より良い未来を描き直す地道な活動を怠ってはならないのだと思います。
当研究所では、様々な分野のスキルを備え、AIと協働しながらより良いアウトプットを創出する努力を惜しまずに日々活動しています。AI活用による業務高度化の相談などがありましたら下記よりお気軽にご相談ください。
コメント