米価格は上昇?据え置き?事象は数値で見るべきか、割合で見るべきか

コンサルティング

米価格5kgあたり17円下落報道にツッコミ

ここ数週間以上にわたって、米の価格がすごい勢いで高騰し、毎週、価格がいくら乗用したという報道がありました。ここで先日、「米価格下がる」という報道を久しぶりに目にしましたが、その金額が5kgあたり17円で、「実質的に下がったとは言わない」「誤差の範囲内だろ?」というツッコミが多数寄せられていました。このケースでは前週比何%という表示の方が金額表示よりも正確に事態を報道することができたと考えられます。このように、ある事象の変化を分析する際に、数値で分析するか、割合で分析するかの判断は簡単なようで難しく、その指標選択を誤ると、全く目的とかけ離れた結果を手にしてしまうおそれがあります。そこで本稿では、このような場面で、数値と割合のどちらを見ればよいのか、それぞれのケースやメリットを交えながら、詳しく説明していきます。

数値を追うべき場合とそのメリット

米の価格ではなく、ここでは利益の分析を行います。利益が上がっているかどうかを確認する場合、利益の数値を見てその値が正か負かをまず見る方が多いと思います。そのうえで、正であることを確認した後にその大きさを見るのが一般的です。利益の値が正であればその取り組みは一応成功したと言えそうです。
この判断手法は例えば以下のような場面で有効です。ある企業に手元資金が100万円あり、収益率1%の投資機会があったとします。この投資機会に乗るか乗らないかを判断するにあたり、数値でぶんせきすれば、この機会に乗れば1万円の利益が生み出されるので乗る一択の判断となるでしょう。少しでも利益の金額を増やしたい場合、このように金額を基準に判断するのは有効で、米の価格においても少しでも安く買いたい人は金額を目安に購入する方が多いでしょう。

割合を追うべき場合とそのメリット

一方で、金額ではなく割合で見る方が有効なケースもあります。例えば、投資家から厳しい投下資本利益率を要求されている企業において、全社的な利益率が7%であるところ、上記のような利益率1%の案件に飛びついてしまうと利益率は下がってしまい、おそらく株価も下がってしまうでしょう。特に上場企業では高い利益率を求められ、さらにこうした割合は前年や前々年の数値と比較されやすいため、利益率の低い案件には、たとえ利益がプラスであったとしても乗るわけにはいきません
米の価格も上がったか下がったかではなく、「どの程度」上がったか下がったかが重要な情報で、前週比99.7%といった割合では価格が下がったとは評価できないため、今回の報道は激しいツッコミを受けたのでした。割合を見れば、「価格横ばい」が的確な表示だったと思います。

それぞれの値の意味は目的によって変わる

こうして両者を見ると、同じ値でもその意味は目的によって変わってくることがわかります。
特に数値はプラスであるか否かが大きな注目点ですが、実際は数値の大きさがそれ以上に大きな要素であり、数値が大きいか小さいかは、他の数値と比較しなければわからない面があります。逆に割合も、その数字が大きいか否かは分母の大きさによって意味が変わります。利益率が8%から10%に上がったとしても、分母となる売上が半減していれば、事業活動としてはジリ貧で決して褒められる状態ではないことがわかります。こうして、数値も割合もそれだけ見れば何かわかるというものではありません。なぜそのデータを分析するのか、その目標をふまえて考えてみると、追加すべき適切な別の数字が見えてくるはずです。この数字を補完してて比較することが重要です。

目的を固めて戦略策定を意識する

利益計画を立てる際にはこうして、分析に先立って目標を設定します。理想は利益率も利益額も右肩上がりで伸びていくことですが、なかなかそううまいことは続きません。今、自社はどうあるべきなのか、今後どのような課題にぶつかると想定されるのかなどをふまえて、まずは優先すべき目標を選定し、データ分析の目的を固める必要があります。この目的が定まれば、どのような数値を補完してどのような指標を分析すればよいかがわかります。そうすると次に、そうした指標の過去の数値を分析し、将来的にこの数値を向上させるためにどうすればよいか、戦略の設計が可能となります。利益計画はこうして目的から過去の数値を分析し、将来に活かしていくことが不可欠で、米の価格の高騰報道も、読者に何を伝えたいのか、という目的から適切な数値を拾い上げていくことが大事です。

まとめ

以上のように、価格が実質的に上がったのかどうか、利益が実質的に獲得できているのかは、ただ漫然と数値を追えばよいわけではなく、その分析をする目的をまずしっかりと意識した上で、その目的の達成のための戦略をきちんと見据えて、その戦略に沿った指標を選ぶ必要があります。最悪な意思決定は、先に結論を決めてから跡づけで指標を選ぶことで、指標の選び方によりいくらでもどんな結論もロジック付けできてしまいます。そのため、何が目標で、どう自分はありたいのかを明確に見据えてから、適切な指標を設定して分析を進めることが必要です。
当研究所では、データ分析の得意な公認会計士・ITストラテジスト・データサイエンティストが御社の戦略設計とそのためのデータによる裏付け確認を総合的にサポート可能です。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました