事業承継は承継先の確保が9割
事業承継の案件は社会全体として増加しています。後継者がいないため事業を廃業にしてしまうと従業員が路頭に迷いますし、サプライチェーンも乱れ社会への影響が小さくありません。
事業承継できずに廃業するケースの最も多い理由は後継者がいないことで、続いて後継者への承継がうまくいかなかったというものです。すなわち、事業承継の成否は後継者選びでほぼ9割方決まっているわけです。
どうしても後継者が見つからずにM&Aによる事業承継を選択する企業も増加していますが、M&Aをすれば解決なのではなく、M&Aこそ適切な承継先を時間をかけて慎重に検討しなければなりません。本稿ではこのことを開設します。
自社で後継者を見つけられないためM&Aによる事業承継が増加
一般的に後継者選びは、親族⇒内部昇格⇒関係者からの推薦⇒M&Aの順番で検討されます。「変化」を好まない日本社会では特に、後継者に求められる要素として「従前通り」、すなわち現経営者と同じように仕事をして同程度の給料が保障されることが重視されます。
そのためには、現経営者によるコントロールがしやすい親族や現在の役職者が最も適切で、この層に適切な方がいない場合、誰かの推薦で外部から招聘することを考えます。
事業承継によって職場環境や待遇が変わることを何より恐れ、そうならないかどうか、時間をかけてじっくりチェックされることが多いです。
M&Aによる承継によるトラブル続出
M&Aを選択すると、仲介業者が承継先を紹介してくれます。多くの場合、あまり時間がなく紹介された中から良さげな相手を、あまり慎重に考えることなく選んでしまいがちです。
その結果、会社の現金預金だけ活用されてすぐに廃業にされたり、事業承継後、事業内容や待遇が大きく変わってしまうといったトラブルが続出して社会問題化しています。
M&Aこそ理想的な承継先を探すのに時間がかかる
親族などの後継者を探すのに、慎重に適性を見極めるように、M&Aの承継先も慎重に適性を見極めなければならず、むしろ全く知らない相手だからこそ、買収される相手の調査は丁寧に行われるべきですが、特に仲介事業者を利用した場合、強引に契約締結を急かされがちで、理想的な承継先であるかどうかの判断をさせてもらえないことが多いことに注意が必要です。
戦略とビジョン
理想的な承継先が何であるかは、従業員目線では従前の職場環境や待遇の維持ですが、企業目線では少し異なります。
まずはそのM&Aが戦略上どのような意味を有するのか。買収金額を上回るシナジーを生じるのかが重要で、ビジョンが似通っていて企業文化の融合が困難でないことなども大事です。こうした要素は、金融機関のFAや公認会計士が助言者であれば当然分析して経営者に説明するのですが、契約締結を急かせる事業者に任せるとこの点の考慮を省略することが多く、事後的にトラブルとなるリスクが大きくなります。
まとめ
自分で後継者を見つけられないから最終手段としてM&Aではなく、M&Aこそ相手を精査し、不適切な相手にM&Aされるのを避けるために改めて自身で後継者を捜し直す必要性も生じます。そのため、M&Aで承継先を探す場合であっても十分な時間的余裕を残して対応する必要があります。
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