事実婚が増加、結婚はリスク?
近年、日本で「事実婚」を選ぶカップルがじわじわと増えています。特に女性の側から、従来型の法律婚に縛られないパートナーシップを望む声が強まっていることは注目に値します。背景には、法律婚がもたらす不便さや精神的な重圧、そして女性の人生設計の変化が密接に関わっています。結婚は現代的にはリスクでしかないのか、本稿では、主に4つの観点から、女性がなぜ事実婚を選び始めたのかを詳しく考察します。
結婚すると姓を変えなければならない理不尽さ
日本では法律婚をすると、夫婦は同じ姓を名乗ることが民法で義務づけられています(民法750条)。事実上、夫の姓に改姓するケースが約95%を占めており、女性が姓を変えるのが「当たり前」とされてきました。しかしこの「当たり前」が、現代女性にとっては大きな負担であり不公平感の源でもあります。
まず、仕事面での不都合が挙げられます。キャリアを積み上げてきた女性ほど、旧姓で培った人脈・業績・資格があり、それを結婚によって変更することは実務的にも心理的にも障壁になります。メールアドレス、名刺、契約書、銀行口座、資格証明書など、あらゆる場面で名前の変更手続きが発生し、「自分の履歴書が途切れるような感覚」に陥る方も少なくありません。
また、アイデンティティの問題も深刻です。姓は単なる記号ではなく、自分の人生や家族とのつながりを象徴するものです。「自分の名前を守りたい」「誰かの家に『入る』という感覚に抵抗がある」という声は決して珍しくありません。このような不満を抱える女性にとって、事実婚は「姓を変えずに自分らしさを保てる」合理的な選択肢となっています。
結婚式や各種手続きが面倒くさいという本音
見逃せないのは「結婚にまつわる煩雑なイベントや手続き」の存在です。結婚式、両家顔合わせ、結納、新居探し、婚姻届提出、各種名義変更・・・これら一連の「お作法」は、忙しい現代女性にとって大きなストレス源になりがちです。
特に共働きカップルが増える中、「時間もお金もかかる結婚式は正直やりたくない」「親族間のしがらみに振り回されるのは面倒だ」という女性は増えています。結婚式に関する全国調査(ゼクシィ2023年調査)でも「式を挙げない『ナシ婚』」を選ぶカップルは過去最高を記録しており、式自体の必要性を見直す動きは広がっています。
また、役所への婚姻届提出や保険・年金・税制上の名義変更など、法律婚に伴う細々とした事務手続きも煩わしさの一因です。とりわけ転職や引越しが多い現代女性にとって、「いちいち書類を書き直す手間を考えると腰が重い」というのが率直な気持ちでしょう。この点でも、法的拘束力はないものの、パートナーとしての実態を保てる事実婚は魅力的な選択肢になります。
結婚してしまうと別れたい時になかなか別れられない不安
法律婚は、結びつきを強固にする一方で、解消する時には大きな労力を要します。離婚には財産分与や慰謝料、場合によっては親権争いといった問題が伴い、心身ともに大きな負担がかかります。裁判所に離婚届を出すだけとはいえ、現実には相手方との合意や調停・裁判に至るケースも少なくありません。
また、社会的な「離婚=失敗」という根強いスティグマも、女性にとって心理的な足かせになります。「一度結婚したら簡単には別れられない」「失敗したくないからこそ慎重になる」という女性心理が働きやすいのです。
事実婚であれば、関係が破綻した際の法的手続きはシンプルです。住民票の「続柄」欄を変更する程度で済み、双方の合意で自然に関係を解消できる柔軟さがあります。自立したキャリアを持つ女性ほど、「いざという時、無理せず自分の人生を修正できる」安心感を求める傾向があります。この点でも事実婚の「出口の軽さ」は、選択肢としての魅力を増しています。
人生最大のイベント「出産」をギリギリまで見極めたい
現代女性の多くは、20〜30代で仕事や趣味を謳歌しながら、「出産」という人生最大の選択について慎重に検討するようになっています。晩婚化・晩産化が進む背景には「子どもを持つかどうか、そのために誰と人生を共にするか」をできる限りギリギリまで見極めたい、という合理的な姿勢があります。
結婚=即出産というプレッシャーは、女性の間で大きなストレスとして認識されるようになっています。「まだ子どもを持つかどうか決められない」「今のパートナーと一生を共にする確信はない」——そうした場合に、まずは事実婚で様子を見るというのは合理的な戦略です。
医学的にも「35歳を過ぎると妊娠率は低下する」と言われますが、だからこそ焦って結婚→妊娠と突き進むのではなく、「本当に自分にとって最適な相手か」を冷静に見極める時間が必要なのです。事実婚は法律婚より関係性をフレキシブルに調整でき、必要に応じて「結婚して出産」「別れて他の道へ」いずれも選択肢を残せるという点で、多忙な現代女性のライフプランに合致しています。
まとめ
こうして女性目線で見ると、出産という人生最大の意思決定をするまで、キャリアは普通に歩みたいですし、余計なプレッシャーを背負いたくないため、事実婚が増加するのは必然です。しかし、これが逃げ道を用意するだけの判断であれば、結局、子どもを産む機会にも恵まれずに、一人で人生を歩んでいくしか道がなくなってしまうおそれもあるので、どこかで結婚の判断に踏み切る必要があります。
当センターでは離婚案件の経験豊富な、特に女性側の離婚案件の多い弁護士・CFPが、単にくっつく・別れるではなく、人生全体のライフプランの観点から相談者に寄り添い、最適な人生設計を一緒に模索します。下記よりお気軽にご相談ください。
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