中小企業の人手不足はこう補え【中小企業診断士×ITストラテジストが解説】

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中小企業の人手不足が深刻化

近年、日本全体で人手不足が深刻化していますが、その中でも中小企業は特に厳しい状況に置かれています。大企業と比較して給与水準が低く、企業名も知られていないため、若くて優秀な人材を確保することが非常に困難となっています。就職活動を行う学生や若年層の多くは、安定性やブランド力を重視する傾向が強く、大企業を志望する傾向があるためです。
また、少子高齢化の進行により、そもそもの労働力人口が減少している中で、若年層の取り合いが起きており、中小企業はこの争奪戦で後れを取ることが少なくありません。特にITやエンジニアリング、医療、建設業など専門性が高く人手不足が著しい分野では、大企業が高待遇で人材を囲い込んでいるため、中小企業が採用できる人材はさらに限定的になっています
こうした背景から、中小企業は単に人を採用するだけでなく、働きやすさや成長機会、柔軟な働き方といった要素を整備する必要があります。人手不足を乗り越えるためには、従来の採用活動だけでは限界があることを認識し、経営全体の構造改革が求められているのです。
そこで本稿では、中小企業がどのように人手不足を解消していくか、その手法を説明します。

不採算のリソースを延命させてはならない

人手不足を補うためには、単純に人を増やすのではなく、労働生産性を高めていく必要があります。そのためには、企業内における無駄なリソースの削減が第一歩です。たとえば、大した業績を上げていないにもかかわらず、高額の報酬を得ている役員や、現場にほとんど関与しない管理職がいる場合、適切な退職勧奨や役割の見直しを行うべきです。
また、生産現場や事務処理の分野でも、古くて効率の悪い機械やシステムを使い続けているケースが多く見られます。修理費や保守費用がかさむうえ、作業時間がかかるといった非効率が、結果的に人手不足をさらに悪化させています。こうした設備は早期に刷新し、新しい省力化設備やソフトウェアへの投資を行うことで、生産性向上を図ることが可能です。
経営資源には限りがあります。その中で最大限の効果を発揮するには、利益を生まないリソースに執着せず、メリハリをつけた経営判断が欠かせません。労働力の数に依存しない経営体質の構築が、人手不足を乗り越える鍵となります。

業務受注を収益性の高い順番から制限する

売上を伸ばすことは企業経営にとって大切ですが、人手不足の状況では無理な業務拡大はかえって企業の体力を削ぐリスクがあります。特に、薄利多売型のビジネスモデルを採用している中小企業では、案件を受注し過ぎた結果、従業員に過剰な負担がかかり、残業や休日出勤が常態化することが少なくありません。
こうした状況は、離職率の上昇や、従業員のモチベーション低下につながります。結果として、ますます人が辞めていき、さらに採用が困難になるという悪循環に陥ってしまいます。これを防ぐためには、案件をすべて引き受けるのではなく、収益性の高い順に受注し、ある程度のところで受注を打ち切るという戦略的な判断が求められます
また、業務の外注化やパートタイム人材の活用も視野に入れ、繁忙期のリソースをどう補うかを事前に計画しておくことが重要です。経営者や営業担当は、単なる受注数ではなく、利益率と従業員の負担とのバランスを見極める力が求められます。

女性や高齢者の適材適所による活用

労働力人口が減少している中で、従来あまり重視されてこなかった層の活用が求められています。その代表例が、女性や高齢者です。子育て中の女性や定年後も働く意欲のある高齢者は、時間や業務内容に配慮すれば十分に戦力となります
たとえば、事務職や軽作業、接客、電話応対など、フルタイム勤務を前提としない仕事であれば、これらの層に担ってもらうことが可能です。また、最近では在宅勤務や時差出勤といった柔軟な働き方が広まっており、通勤に不安のある高齢者や家庭の都合に合わせて働きたい女性にとっても、働く機会が広がっています。
さらに、彼らの経験や人間力は、若手社員の教育や職場の雰囲気づくりにおいても大きなプラスとなります。ただし、受け入れる企業側も、労働環境や制度面での配慮が必要です。時短制度や福利厚生の拡充、段階的な業務習得支援などを通じて、定着率を高めることが重要です。

AIの活用

今後の中小企業にとって、AIの活用は避けて通れないテーマです。人手不足に悩む中で、生産性を高める手段としてAIは非常に有効です。すでに会計や勤怠管理、請求書の作成など、定型業務においてはAIによる自動化が可能となっており、経営者やバックオフィスの業務負担を大幅に軽減できます。
また、最近では生成AIの登場により、メール文や社内文書の作成、マニュアル整備、さらには顧客対応の初期段階までAIが担えるようになっています。これにより、限られた人員でも業務の幅を広げることができ、社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化できます。
もちろん、AI導入には初期コストがかかりますが、長期的には業務効率の改善と人的コストの削減によって、十分に回収可能です。また、ITリテラシーに不安のある企業も、外部ベンダーや行政の支援を活用することで導入ハードルを下げることができます。
中小企業が限られた人員で競争力を保ち続けるには、AIを積極的に取り入れ、人が人にしかできない仕事に集中できる環境を整えることが必要です。

まとめ

中小企業が抱える人手不足の問題は、一時的なものではなく構造的な課題です。今後も人口減少が続く中で、企業規模にかかわらず「少ない人材でどう成果を出すか」が問われる時代になります
そのためには、まず採用戦略を根本から見直し、知名度や給与面で不利な中小企業が、柔軟な働き方や職場環境の改善を武器に人材を引きつける工夫が必要です。また、内部のムダを見直して生産性を上げることは、人手不足対策の根幹です。働かない役職者や老朽化した設備に固執するのではなく、成果に直結する投資と人員配置を行いましょう。
加えて、無理な受注で従業員の疲弊を招くよりも、収益性を重視して業務量をコントロールする姿勢も欠かせません。女性や高齢者といった労働市場に眠っている人材の活用、そしてAIをはじめとするテクノロジーの導入も、これからの経営において重要な柱となります。
人手不足は決して克服不能な課題ではありません。自社の強みと制約を冷静に見極め、優先順位をつけて対策を講じていけば、中小企業でも十分に競争力を維持し、成長を続けることが可能です。
当研究所では、経営管理大学院で人財マネジメントを副専攻した弁護士・公認会計士・MBA・中小企業診断士・ITストラテジストが御社の人手不足対策について多角的に解決策を模索します。下記よりお気軽にご相談ください。

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