高田馬場で声優が視察される事件が発生
先日、高田馬場でいわゆる「ライバー」と呼ばれるリアルタイム動画配信を行っていた女性が、突然男に切りつけられて死亡した事件がありました。この事件の具体的な経緯はまだ警察が捜査中ですが、犯人の男は執拗に被害者を切りつけ、その場を立ち去るこおもなく動画撮影していたとのことで、異常な状況が伺えます。また、二人の間に金銭トラブルがあった可能性も報道されています。
動画投稿者は増加の一途を辿っており、ライバーはその中でも比較的伸びている分野です。本稿は、決してこの事件について考察するものではありませんが、一般論としてリアルタイムでの動画投稿にどのようなリスクがあるか、そしてどのような点に注意しなければならないかを整理します。
リアルタイム投稿に移行している理由
動画投稿と言えば、YouTubeを最初に思い浮かべ、視聴してる方は多いと思います。YouTubeを見ていると様々な動画が自動的に提案されますが、多くの方は無名の投稿者の再生回数の少ない動画はスルーして人気動画を中心に見ていると思います。そのため、新規参入者が人気者になるためにはかなり工夫が必要なのが現状です。
動画投稿初心者の動画が視聴されない理由の1つとして、企画力の無さが挙げられます。無名の人間が安全な環境で台本通りの話をしてもただつまらないのです。ここでリアルタイム投稿が存在意義を発揮してきました。リアルタイム投稿では、投稿者のアドリブスキルが重要になり、台本にないアクシデントも発生しがちで、企画力がなくても視聴者が先を読めない、「この先どうなるの?」という緊張感を持たせることができるため、こちらに移行する人が増えています。
事故のリスク
まずこの段階で、あるリスクに気づかれるのではないでしょうか?台本通りに行かないライブ投稿では、どうしても事故のリスクがあります。テレビ番組のグルメ旅のロケでは、きちんと事前のネゴがつけられており、撮影中もタレントのアクシデントが生じないようスタッフがしっかり目を光らせて監視していますが、個人の投稿者の撮影ではそうはいきません。撮影やトークに気をとられて自動車や自転車、子どもなどと衝突すると民事・刑事責任を負う事故につながりかねませんし、事後編集になるため、映してはいけないものが映りこんでしまうリスクもあります。
テレビ番組ではこうしたリスクを事前にできる限り取り除いたうえで、事後の編集も行いますが、素人の「生放送」がいかに危険であるかは、この観点だけでも十分わかると思います。
バーチャルで蓄積する「投げ銭」という恨み
ライバーが投稿する動画が、他の動画よりも視聴者の目に触れやすくなる仕組みとして「投げ銭」制度があります。視聴者が面白かったシーンなどに対して一定のお金を支払う、いわゆる「投げ銭」という制度ですが、これが増えれば増えるほど上位表示され、より多くの人の目に留まりやすくなる制度が、ライブ配信を支える重要な仕組みです。
ただ、どうしてもそうすると、投稿者はKPIを視聴者数ではなく、投げ銭の金額に置いてしまいがちです。投げ銭が増えれば増えるほどファンも収入も増えて一石二鳥なのですが、この投げ銭はバーチャル世界で取り交わされるものであるため、スーパーマリオでコインをたくさん集めるのが良い、みたいな傾向になりがちです。しかし、支払い手にとっては貴重な労働の対価。知らずのうちに恨みが蓄積してしまうという事例は様々なところで確認されています。
垂れ流す位置情報・個人情報のリスク
リアルタイムの動画投稿の意外に大きなリスクが個人情報や位置情報を晒してしまうことです。もちろん、動画投稿者も一定程度は考えていますので、本名や住所がばれるような投稿には十分注意しているでしょう。しかし、アドリブがなければ動画は盛り上がらず、アドリブが増えれば、無意識的にその人の生活が炙り出されてしまいます。そうした動画を何本もあげていたら個人情報はどんどん暴き出されてしまいますし、リアルタイム投稿で位置情報を晒すのはかなり大きなリスクで、ファンや恨みをもった人間など、投稿者に特別な思いを持った「招かれざる客」を自然と引き寄せてしまう点には厳重な注意が必要となります。
まとめ
私も売れないYouTube投稿を細々とやってはいますが、アドリブのリスクは高すぎるため、売れなくてもよいので、安全な場所で台本通りやらなければと感じています。ライバーを目指す場合、どのような動画にするかの作りこみも大事ですが、以上のようなリスクをどう回避するか、自分ひとりでできることには限界がありますので、協力者を頼りながら十分な準備をする必要があると考えられます。
当研究所では、ネット上のリスクと対応に詳しい弁護士・ITストラテジストがこうした危険に対する対策のお手伝いが可能です。下記よりお気軽にご相談ください。
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