知らぬ間に「マネーハラスメント」していませんか?
職場や友人関係のなかで、何気ないひと言が誰かを深く傷つけることがあります。その中でも近年、じわじわと注目されているのが「マネーハラスメント(通称:マネハラ)」です。
「え、お金の話なんて普通にしてるけど…?」
そう思った方も多いのではないでしょうか。実はこのマネハラ、加害者に悪意がないケースが非常に多いのが特徴です。マネーハラスメントとはお金にまつわるハラスメントを総称するもので、当人に悪意はなくても、お金が絡むものであるため、深い遺恨を残すおそれがあります。
一見、自然な会話に見えたとしても、相手の収入、生活スタイル、価値観に踏み込むような発言は、受け取る側にとっては「詮索されている」「見下されている」と感じさせることがあります。
そこで本稿ではこうしたマネハラの実情と、うっかり加害者になってしまわないための方策を解説します。
収入を聞く
職場で「給料いくらもらってるの?」と無邪気に尋ねる人がいますが、これは人間関係にヒビを入れる危険な質問です。収入はプライベートな情報であり、職場では非常にデリケートな話題。聞かれた側は「比べられている」「値踏みされている」と感じ、不快に思うことが多いのです。人によっては「たくさん収入を得ていることが知られると、”驕れ”と言われてしまう」と感じたり、逆に「何だ、役職は高いけれど、その程度の収入か」と思われるのを嫌がる人もいます。
また、たとえ悪気がなかったとしても、「マウントを取りたいのか」「嫉妬しているのか」と誤解されやすく、周囲の信頼を失う原因にもなります。収入の話は、相手との距離感を誤ると一気に“嫌な人”認定されかねません。
円滑な人間関係を築くためにも、お金の話題は慎重に。興味本位の一言が、長く尾を引くかもしれないことを忘れずにいた方が良いでしょう。
同僚からお金を借りる
金銭管理の下手な人は、しばしば必要なお金が不足し、同僚などに金銭の融通をすることがあります。多くの方にとって、たかが数千円程度を貸して同僚の助けになるのであれば、それは喜ばしい事と捉えるのですが、こうした「金銭管理の下手な人」は本当に金銭管理ができないため、借りたお金を自発的に返そうとしませんし、それが当たり前だと考える傾向があります。
善意でお金を貸した側も「返してくれ」という督促はあまりしたくありません。しかし、こうした借り手は督促しないとお金を返してくれず、逆にかえってさらにお金を貸してくれるよう増長しがちです。
こうしてお金を借りて自発的に返さない人間は、最初の金銭融通が善意から発生していることも合算して、意外に深い不満や憎しみを知らない間に受けがちです。
勝手に企画して集金する
同僚に結婚や出産などの慶事があった場合、普通の人であればお祝いをしたいと思います。ただ、そのお祝いの相場観は人によって異なります。
ここで、こうした慶事の際に張り切って、勝手に同僚全員によるお祝い企画を立てて集金を始める人がしばしばいますがこれも嫌われる大きな要因になりがちです。
皆、お祝いはしたいのですが、自分の収入やその時点での懐事情に合わせてお祝いの水準を選びたいですし、人によってはお金ではなく自作のイラストなどの特技を提供したい方もいます。ここで張り切って、階級別に一律に数千円徴収されるのは大きな痛手になることも多く、自分の意図しないお祝いを強要されることに、深い不満や嫌悪感を抱く方が発生しがちです。
割り勘の精算で誤魔化す
最近では、職場の飲み会が大きく減少しています。コロナ禍以降、飲み屋離れの傾向が強まっているのみありますが、お酒の楽しみ方や会話内容が多様化して大人数になればなるほど嗜好が合わなくなったり、時間や費用の使い道も多様化して、それぞれが自由にやりたいという傾向が強まりつつあります。
飲み会をすると割り勘をしますが、完全に同じ金額で割り切れるケースは稀であり、通常は幹事が差額を着服したり、現金を集金して自身は総額をカード払いするため、ポイントを得したりしがちです。
実際には飲み会の幹事には相応の負担がかかっているため、これは決して不当な利益ではないことが多いと私は思うのですが、幹事がそのことをしっかりと情報発信していないと、「コイツはいつもズルしている」と思われ、不満や反発を生じやすいです。
まとめ
お金には、その人の生活や生き方が反映されます。だからこそ、それに関する言動は、プライバシーの侵害や人格の否定と受け取られるリスクがあります。しかも、お金のことは感情と直結しやすく、心の奥に残りやすい。冗談のつもりで言った一言が、のちのち深い恨みや人間関係の断絶に発展することも少なくありません。
「自分は悪気がないから大丈夫」と思っている人ほど要注意で、マネハラは悪意がないからこそ、無意識のうちに繰り返してしまいがちです。大切なのは、相手の経済事情に関する話題には慎重になること。お金の話をする前に、「これは本当に相手のためになる話か」「不快にさせてしまわないか」を一呼吸おいて考えてみましょう。
当研究所では、各種ハラスメント対応の経験豊富な弁護士・MBAが、こうした無意識なハラスメントを減少させて企業の生産性や企業価値を向上させるサポート業務を提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。
コメント