巨人の坂本選手が2億4000万円の申告漏れ。プロスポーツの選手の報酬と経費とは?

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巨人の坂本選手が東京国税局から約2億4000万円の計上漏れの指摘を受ける

巨人の坂本選手が過去3年間で約2億4000万円の所得税申告の計上漏れを東京国税局に指摘されました。坂本選手といえば独身で、遊びが派手であることがしばしば報道されており、今回、知人との飲食費などが経費として否認されました。例えばクラブなどでの飲み代は経費として控除するのはかなり難しいですが、ではどの範囲の経費がいかなる理由で控除が認められるのか、そこらの社長さんは飲食代を経費で落としているがそれと何が違うのか、国税局の指摘が恣意的な判断になる可能性はないのか、など色んな疑問が生じ得るケースではないかと思います。
そこで本稿では、プロスポーツ選手の所得税の基本的な事項から、どのような経費が控除可能であるか、坂本選手が今後なすべき手続などを順を追って説明いたします。

「プロスポーツ選手は自営業」の意味

プロスポーツ選手は自営業だとよく言われます。その意味を端的に言うと、プロスポーツ選手はチームに雇われているわけではない、ということです。
一般の会社員は会社と雇用契約を締結します。雇用契約を締結すると、従業員は会社の指揮命令に従って業務に従事する義務を生じ、この義務の対価として給料をもらい、各種社会保険料などを一部負担してもらい、よほどの事が無い限り解雇されません。
これに対し、プロスポーツ選手とチームの関係は雇用ではなく、あえて言えば請負契約であり、選手は報酬に消費税を加えた金額を受領できますが、社会保険料の負担と、解雇規制はありません。こうして得たプロスポーツ選手の所得は給与所得ではなく、事業所得であり、前者であれば経費の控除はできませんが、後者は経費控除が認められます。これが「プロスポーツ選手は自営業者」だという言葉の意味です。

自営業者として控除できる経費の範囲

事業所得を有する方はその所得の獲得に関する経費を所得から控除することができます。経費が多い方が税金は少なくなりますが、利益も少なくなるため、何が経費に含まれるかは非常に重要なのですが、経費も多種多様であるため、一律明快な基準は用意されていません。
何が経費として落とせるかを考える場合、逆に何が落とせないかから考えた方がわかりやすいです。経費として落とせない費用としては、自分の生活のための出費、私的な買物、借入金の返済などが挙がります。最後の返済はただのお金の移動であり、商品やサービスの費消の対価ではないからですが、それ以外は、「公私混同」を排除さえしてしまえば、何らかのかたちで事業所得の獲得につながってはいると考えられるため、経費に計上できる可能性は高いです。

自主トレは経費ではない?

坂本選手のケースに戻ると、クラブでの飲み代は自分の遊興のためであると評価されるため、経費で落とすことがはできません。世の中の社長さんが一見私的な飲食代を経費で落としているケースとの違いは、後者は所得獲得につながる取引先との飲食であり、「会議」として何らかの商談などを行い、収入獲得に尽力したエビデンスをきちんと残している点にあります。
坂本選手のケースで疑問なのはプロ野球選手がキャンプ前の1月に行う自主トレ費用まで否認されている点です。自主トレはプロ野球選手として活躍するために必要な活動であるため、常識的な範囲内では経費算入できるはずですが、ひょっとしたら自主トレ中に少し豪華な宿泊施設や飲食を行い、不当に収入を減少させたと判断されたのかもしれません。

いわゆる「脱税」ではない

2億4000万円の計上漏れはいかにも大事に見えますが、この件はいわゆる脱税ではなく、悪質性はないと報道されています。脱税と計上漏れの違いは、前者は巧妙に収入を隠す行為を伴う点にあり、今回は坂本選手に所得隠しの意図はなく、控除できる経費の範囲を間違えたというケースとして処理されています
坂本選手の今後の手続としては、収入を改めて正確に計算し直して、不足する税金に遅延金を伏して納めることになります。この手続を誠実に行えば刑事手続に発展したり、シーズン中に呼び出されるなどしてプロスポーツ選手としての活動を制限されるなどの負担が発生することはなく、この件はこれ以上大事に発展することなく収束すると思われます。

まとめ

所得税にかかわらずその他の分野でも収入を得た後に税金をあまり支払いたくなく、過剰に費用を計上したいという気持ちが生じるのはわかります。そして、ルールが明確でないため、説明を工夫すれば私的費用に近いものであっても経費控除できるのでは、と思ってしまう気持ちもわかります。これに対する税務署の判断に主観が入らないとも断言できないのですが、多くの場面では常識的な判断を試みていると感じられます。微妙な経費の計上につきましては結論ありきで計上するのではなく、きちんと専門家に相談することをお勧めいたします
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