トランプ関税で任天堂スイッチ2のアメリカでの予約開始が延期

リスクマネジメント

トランプ関税でアメリカ経済が混乱

トランプ大統領が自国への輸入品に対する関税を引き上げることを表明してから、昨年好調であったS&P500はもちろん、世界レベルで株価が下落しています。そして、正式に国別の関税引き上げ率が発表されるや、先日、任天堂スイッチ2のアメリカでの予約開始が延期されました。24%の関税がかけられるということは、単純に価格が1.24倍になるということで、需要予測を再計算したうえで、販売計画や生産計画を見直す必要が生じるためです。
トランプ大統領は自国を豊かにするためだと言ってはいますが、これだけ世界中の経済が混乱することが本当に優れた政策だと言えるのか、多くの方が疑問を感じておられるのではないでしょうか。
そこで本稿ではアメリカでの関税引き上げが我々の生活にどのように影響するのかを整理いたします。

目的は貿易赤字を減少させて自国産業を育てる

トランプ大統領の意図は貿易赤字を減少させて自国産業を育てることにより、アメリカを再び豊かにするところにあります。例えばアメリカでも自動車産業は活発ですが、どうしても日本産やドイツ産の車が人気であり、今後EVが主流になる中で、その他の比較的労働力の安い国で生産された安価な車がアメリカに輸出されることも増加すると見込まれています。
すなわち、外国産の自動車がアメリカに入ってくることでアメリカは自動車に限定した貿易収支だけ見ると大赤字であり、国内の自動車産業従事者の雇用も、自動車製造業者からの法人税もなかなか増加しにくい状況にあります。ここで、外国産の自動車に関税を課して販売価格を上げると、アメリカ国内の消費者は割安な国産車を購入するようになり、貿易赤字を減少させながら、国内の雇用や法人税を増加させることができる、というのが目論見です。

自由貿易よりも経済全体では損をする

こうした高い関税を課す保護貿易は、貿易赤字の解消や国内産業の発展につながる可能性はあるのですが、経済学的には社会全体では損をすることが指摘されています。詳しい図面の添付などは省略しますが、関税を課すことによって、政府には関税収入が入り、これは国民や国内の事業者へ還元されていくのでしょう。しかし、関税が課されて販売価格が上昇することにより、輸入品の販売数量は確実に減少します。この減少した客が国産商品の購入に向かわなければ販売数量全体では減少しますし、仮に全員が国産商品に向かったとしても、消費者は割高で本来欲しいものではないものを購入することとなるため、損が発生します。こうして、関税収入よりも大きな損が発生するため、社会全体としてはどうしても損失の発生が避けられないのが経済学的に主張されています。

物価高で低所得者層の生活が脅かされる

関税で輸入品の価格が上昇すると、当然、社会の様々なものが値上がりします。いかにアメリカといえど、何でも自給できるわけではなく、自給できない食料品は輸入せざるを得ないため、こうした食料品やその加工品は軒並み値上がりします。
物価高騰の辛さは日本人もここ数年痛いほど知っていることですが、関税で20%以上も値上がりするようであれば、特に低所得者層への影響は甚大で、生活がおびやかされてしまうおそれもあります。低所得者層の生活が脅かされると、治安が悪化したり、社会保障額の増額が必要になるなど、様々な領域に負担のしわ寄せが行くと想定され、サブプライムローン破綻で大問題となったリーマンショックの再来もひょっとしたらあり得るかもしれず、これからしばらくの間、アメリカ経済への関税の影響は注視が必要です。

スイッチ2などの代替性のない商品を購入しにくくなる

先週、任天堂がスイッチ2の予約受付開始を延期しました。任天堂の利益にならないところで価格が20%以上も上がるのであれば、計画を1から見直す必要も生じるためです。消費者目線でも、20%以上も値上がりするのであればスイッチ2の購入を見送る方も増えるでしょう。アメリカには他にも遊具はたくさんありますが、スイッチ2は間違いなく代替性のない商品であり、関税が理由でこうした代わりの利かない商品をアメリカでは購入できなくなる可能性が高まるという影響は決して看過できないと考えられます。アメリカ国内で何でも生産できるわけではありません。そうしたこともふまえて、トランプ大統領はまだ、高率の関税を課すことが本当にアメリカを豊かにする行為であるか躊躇無く判断できるのか、多くの方が疑問を抱えているところだと思います。

まとめ

アメリカの関税政策により、日本企業のアメリカへの輸出が減少します。その売れ残り分が、一次的には国内で値引き販売されるかも知れませんが、中期的には日本企業の生産が減少し、企業の利益減少に伴って雇用減少にも発展するかもしれません。そのため、アメリカへの輸入依存度の高い日本企業の今後の動きについて、その販売戦略や生産計画がどう変化するかという点も注視が必要です。日本は食料品を中心に、輸入品の関税の引き上げは困難であるため、いかに輸出量を維持するかが喫緊の課題となると思われます。
当研究所では、数字に強い公認会計士・CFPが、こうしたアメリカの関税政策が、日本の経済にどのような影響を生じ、企業や家庭の収支にどのような影響を及ぼすかを分析し、その影響を緩和する方策を助言いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました