値上げとシュリンクフレーションどちらがお得

コンサルティング

物価高の2つのパターン

物価高で何もかもが値上がりする中で、値上げの仕方も様々です。単純に同じ容量で価格を1割増するケースと、価格を据え置いたまま内容量を1割減らすケースで、後者は内容が減少することからシュリンクフレーションと言われることもあります。この2つの実質値上げは、あまり違いは無いように思いがちですが、そうではなく、消費者目線でも、製造者目線でも数字上、内容上、そして満足度などの精神的な面でも意外に大きな違いが発生しがちで、注意が必要です。
そこで、本稿ではある商品が単純に1割値上げした場合と、内容が1割減った場合を比較しながら、その結果、消費者・製造者双方にどのような変化が生じ、それは有利に働くのか、不利に働くのかを、会計や健康面なども考慮しながら多角的に検証していきます。

消費者目線でシュリンクフレーションが有利な場合

価格据え置きで内容量が1割減少すると、同じ量を購入するためには1.1倍の個数を購入する必要が生じます。ここで、この商品が、それほど優先度の高くないものであれば減量を受け入れて家計の出費増加を避けることができます。また、保存期間の短い商品であれば、より小口で購入出来る方が新鮮なものを口にすることができますし、体に悪い商品、例えば高資質のスナック菓子やお酒などであれば、減量を機会に摂取を減らすこともできます。また、パッケージやノベルティなどを集めるのが趣味である場合、購入点数が増えることにより、こうした付随品の入手が増加する点も有益です。すなわち、我慢できる・我慢すべきものを我慢するための機会となり、より細かく計画的な家計管理ができる点が大きなメリットです。

消費者目線でシュリンクフレーションが不利な場合

価格据え置きで内容量が1割減少すると、同じ量を購入するためには1.1倍の個数を購入する必要が生じます。この最大のデメリットは購入費用の増加です。宅配を利用したり、買い物に車などで出かけると1回あたり一定の費用が変わります。そうすると購入回数が増加すると、必然的に無駄な費用も増加しがちです。また、この商品が使用頻度の高い商品であれば、内容量が減少することで不満が生じやすく、精神的にデメリットがあるほか、その回避のためについつい買い込んでしまう危険もあります。また、購入する点数が増加すると必然的に包装などのゴミが増加し、その片付けや掃除の手間が増加するほか、場合によっては余計な費用がかかる可能性もあり、利用頻度の高い商品はできる限り内容量の多いものを購入するのが望ましいでしょう。

製造者目線でシュリンクフレーションが有利な場合

製造者が内容量を減らして価格維持をする最大の目的は売上の維持です。値上がりすると、どうしても消費者は他の競合商品と比較し、よりコスパの良い商品に乗り換えてしまいがちです。ここで、内容量が減っても価格が据え置きであれば、その商品を愛好する消費者はなかなか乗り換えの判断をしない傾向があります。こうして、価格据え置きで内容量だけ減らす手法は、何個売れるかの予測において過去のデータを活用しやすく、精度の高い販売見込が得られれば、それに合わせて製造計画も最適化することができ、余計な費用の発生を抑えることができます
シュリンクフレーションを製造業者側が選ぶ大きな理由は、自社スタートで情報を見るのではなく、ニーズ志向すなわち、いくつお客に売れるかという情報から利益を最大化する戦略を設計する枠組みを採用しているためであり、たくさん売れる人気商品ほど、その販売総数がぶれにくいことが何よりのメリットです。

製造者目線でシュリンクフレーションが有利な場合

製造者が商品の価格を据え置いて内容量を減らすと、製造現場で製造方法を変更する必要が生じます。これは、場合によっては大きな費用負担につながりかねませんし、製造方法を変えると異物混入や事故のリスクが増加するおそれもあります。
人気商品であれば、内容量が減少すると購入点数を増やす消費者が増加します。そうすると、企業としての仕事総量が増加して人件費や電気代などが増加するほか、包装材もより多く手配しなければなりません。こうした追加費用が、商品本体の価格に対する割合が小さいのであればあまり気にする必要はないかもしれません。しかし、何もかも値上がりしている中で、こうした付随的な構成要素の費用も増加傾向にあり、同じ容量の商品を売るために小分けして個数をたくさん売ろうとすると、無駄に付随的な構成要素の原価も高くなり、収益を圧迫する要因となり得るデメリットがあります。

まとめ

単純な値上げも、価格据え置きで内容量を減らすのも、結局同じではないかと思いがちですが、消費者においては利用頻度の高いものは大容量で、そうでない商品は小容量で購入することが望ましく、製造者においては、基本はシュリンクフレーションが収益管理しやすいものの、あまり小容量になりすぎると余計なところで無駄な費用が発生しがちであるため、どこかのタイミングでまとめて値上げする必要が生じます。
当研究所では、データを活用した収益管理を得意とする公認会計士・データサイエンティストが、御社の値上げ戦略とその収益計画への影響度について、実際のデータに基づいてできる限り精度の高い助言サービスを追求し、提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました