コンプライアンス違反倒産も増加傾向。対策は「一人に任せない」

事業再生

2024年度のコンプライアンス違反倒産が過去最多に

いろんな業種で倒産件数が過去最多に、という報道がありますが、今回は業種ではなく倒産原因をクローズアップして見ていきたいと思います。本稿で取り上げるのは「コンプライアンス違反」。「ルールを守らない企業が業界から退場させられるのは当然だ」という意見も聞こえてきますが、コンプライアンスは非常に広い概念で、刑事罰を伴うケースや、事業停止処分につながるような違反は退場やむなしであるものの、軽微なコンプライアンスはどのように遵守を促し、また、軽微なコンプライアンスがあった場合、どのように信頼を回復し、事業を戻していくかはなかなか難しい問題です。そこで今日は、こうしたコンプライアンス違反を事例別に検討し、生き残るべき企業の像とその手法を探っていきたいと思います。

粉飾

コンプライアンス違反倒産の件数別で最も多いのは粉飾です。会計監査を受けていない非上場企業は、顧問税理士にさえ見つからなければ粉飾は比較的自由に行うことができる環境があります(ただし、昨今のクラウド会計の進化により、これに歯止めがかかることは期待されています)。
粉飾は、例えば取引先の信用を得るために利益をよく見せたり、税金を支払わないために利益を過小に計上するなどの手法があります。もちろん、1円でも事実と異なれば粉飾で違法なのですが、実際に問題となるのは「詐欺」に匹敵する水準にまで金額が大きくなる場合です。すなわち、ちょっとした出来心で僅少な額をごまかしても社会ではもう1度チャンスをもらえる場合がありますが、「詐欺」に比肩するレベルで粉飾を行ってしまうと信用失墜をもはや挽回することができないため、企業としては倒産するしかありません。対策として、1人の判断で恣意的な会計処理ができないよう、内部統制を小さな組織でも導入することが有効です。

キーパーソンの刑事事件

昨今、どのような組織でもキーパーソンにカギとなる業務が集中する組織が圧倒的に多くなっています。同期入社はスタートラインは同じでも、競争によりすぐに待遇に差がついて当たり前で、できる人間にどんどん難しいタスクを割り当てていくことで、組織能力と生産性も高まるためです。こうなると、キーパーソンが急病になった際などに誰がフォローするのか、という問題が生じがちです。
また、コンプライアンス倒産で意外に多いのがこうしたキーパーソンの刑事事件です。昇進するにしたがって倫理観が後退し、自分がやりたいことを優先したり、企業としての成長速度ありきで意思決定しまいがちになると、ついつい刑事事件に手を染めてしまいがちです。効率性も大事ですが、特定のキーパーソンへのタスクの集中は回避し、社内の倫理観の醸成にもしっかり配慮する必要があります。

下請けイジメや業法違反

前項はキーパーソン個人の対応でしたが、組織全体として「きれい事よりもノルマ達成」が優先される企業風土があると、違法行為に対して誰も疑問を持たない、というような事も発生しがちです。例えば下請けイジメは、法律上問題であるという認識はあったとしても「自由交渉の結果だ」「立場の強い者が交渉力を発揮して何が悪い?」などと組織として正当化する空気が生じることもあります。同様に、各監督官庁の指導に従うべき各種業法も、「真面目にすべていたら仕事にならない」と、監督の目をかいくぐった業務活動を優先しようとする事業者がしばしば発生します。こうした行為は明確な法律行為で、発覚した時点で謝罪した上で、再発防止策を講じれば倒産には至らないはずなのですが、「法律はかいくぐってナンボ」といった組織風土になってしまうと、もはや信用回復は難しく、倒産するしかなくなってしまいます

資金使途不正

粉飾と似て非なる類型として、資金使途不正が挙げられます。昨年、大きな問題となったのはM&Aを通じて悪質業者が買収先の流動資産だけを吸い上げて残りを倒産させるケースで、これは法律による手当が進んでいくのかと予想されます。
このほかで多いのは補助金などの不正受給。「もらえるものはもらっておけ」と、本来、補助金を受給できる要件は充たしていないにもかかわらず、あたかも充足しているように見せて補助金を受けるのはもはや詐欺行為で、金額にかかわらず相当なペナルティが避けられません。資金さえあれば儲ける仕組みは整っている、というような状態の企業で起こりがちなパターンですが、補助金は「もらっておけばよい」ではなく、きちんとその要件を確認し、自社のビジョンに合致したものだけを選ぶ必要があります。

まとめ

以上のように、コンプライアンス違反による倒産は、「ある一線」を超えた段階で後戻りできない状態に陥ってしまいがちで、この一線を越えないためには、権限を有する個人に負担や権限を集中させず、複数名にこれを分散することや、組織全体として法令遵守意識をしっかり植え付け、決して手元のタスクやノルマを達成すればよいわけではないことを繰り返し伝達していくことが不可欠です。業種別の倒産要因であれば、会社が傾き始めた後に専門家がてこ入れして事業再生できる可能性がありますが、コンプライアンス違反は一線を越えてしまうと倒産一択になりがちなので、十分に注意する必要があります。
当研究所では、法律・会計両面で事業再生に導くことのできる弁護士・公認会計士・MBAが御社のコンプライアンス体制や内部統制を整備し、経営を守ります。下記よりお気軽にご相談ください。

まとめ

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました