石破首相の商品券問題
石破首相が若手議員に対して1人あたり10万円の商品券を渡した問題がまだまだ波紋を呼んでいます。問題発覚当初の首相の態度からすると、石破首相は商品券の配布は一切問題ないと考えていた節がありますが、やがて色んな指摘がなされて来る中で事態の深刻さを察知し、焦り始めたような印象を受けます。私はこの問題は違法である可能性はあるものの、刑事事件にまで発展する可能性は低いと考えています。しかし国会界隈では、今後、選挙戦も含めてこの問題はまだまだ厳しい追及が続いていくものと考えられます。
仮にこの商品券の授受が違法であった場合、首相が違法行為を行ったという事実は、もはやいかなる敏腕弁護士でも難しい仕事になります。そこで本稿ではこうした窮地に陥らないためにコンプライアンス判断をどうしていけばよいかを紹介いたします。
法律の不知は免責されない
まず大前提として「法律を知らなかった」は一切通用しない言い訳になります。似て非なるところなので難しいところなのですが、一定の「事実」を知らなかった場合、その事実に対する認識がないため、故意がないと認定される可能性はあります。しかし、法律は公示されており、また、全国民が守るべき物であるため、「見ていなかった」としても故意を免れることはできません。
兵庫県斉藤知事が再三にわたって「違法の認識はない」を連発していますが、おそらく本人もその言い訳が通用しないことは承知の上で、この言葉は「現時点で違法は認めない」というポーズに過ぎず、刑事事件として捜査が始まってしまうとこの言い分は全く意味がなくなります。あえて「違法の認識がない」と述べるメリットとしては、強引に疑惑を晴らそうとするとボロが出やすくなるため「嘘をつかずに」疑惑を否定する手法として使えることくらいでしょう。
従前からの慣行だからといって適法であるとは限らない
現時点では真偽不明ですが、首相が若手議員に商品券を渡すのは従来からの慣行だった、という報道もあります。しかし、仮に従来からの慣行であったとしても、その慣行が適法であるとは限りません。
ここ数十年で、学校やスポーツの現場における体罰が大きく減少しています。我々、就職氷河期世代の人間は、徳の低い学校やスポーツチームに入ると厳しい上下関係のもと、暴力やしごきが当たり前の社会がありました。しかし、こうした活動は「赤信号皆で渡れば怖くない」状態であっても違法行為には違いありません。不祥事の公表に伴う社会の反応が少しずつ変わり、徳の高い組織からどんどん現場がクリーンになっていきました。
従前の慣行であってもそれを守ろうとせず、おかしな慣行はたださなければいけません。
結論ありきでこじつけた理屈はただの詭弁
組織にありがちな失敗として、ロジックベースで結論を導くのではなく、先に結論を出してその理屈を考えようとするパターンがあります。
企業経営では結果としての営業成績が先ではなく、創業者の理念がまず存在し、これに基づいてどのように組織のビジョンやミッションを達成するかを考えます。つまり、理想が先なのです。しかし、だからといって違法営業が認められるわけがありません。個々の活動が法に反しないかどうか、法に反しないとしても倫理に反するため社会的非難を受けないかどうかチェックする必要があります。世の中の失敗の多くは、例えば「この税金を支払いたくないから帳簿を少しごまかそう」という風に、最初から完全に違法行為に及ぶわけではありませんが、結論ありきでその手法が違法とならないよう後付けの理屈をつけるパターンです。しかしこうしたこじつけたロジックはただの詭弁に過ぎず、裁判所では一切通用しません。
疑問を感じたら弁護士に相談しよう
世の中にはグレーな案件がたくさんあり、何が適法で何が違法なのか、あるいはどうした条件が充たされれば適法に変わったり、違法に変わるのか、という点が非常にわかりにくいものも多々あります。
そうした難しい判断は、知らなかったでは済まされず、判断を誤れば当然、責任は発生します。非常に難解かつリスクの高い意思決定になりますので、こうした場面では弁護士を徹底的に活用することが必要です。もちろん、前項のように、先に結論を固定したうえで、後付けの理屈を考えろ、というスタンスでは弁護士はうまく活用できません。リサーチ能力が高く、慎重に物事を判断できる弁護士に客観的視点で分析してもらえば、自分の想定していないところで違法の誹りを受けることは免れられるでしょう。
まとめ
黒か白か、世間一般は簡単に判断したがりますし、一度スキャンダルになったり、ネガティブな報道がなされると世間は勝手に黒と認定してしまいます。こうなるともはや、名誉回復はかなり難しい状態に陥ってしまいます。そのため、そのような危機に陥る前に、ただのイエスマンではなく、客観的な視点で問題を分析し、冷静な助言をしてくれる弁護士を確保しておくことが非常に重要です。
当研究所では、幅広い分野に精通した弁護士・MBA・ITストラテジストが、御社が危機に陥らないよう、事前にその芽を察知し、客観的な見地から、ダメージを最小限に抑える最善の意思決定を経営者とともに見いだします。下記よりお気軽にご相談ください。
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