コンビニ客単価が過去最高。しかし、これだけでは正確な情報は見えない
日本フランチャイズチェーン協会によると、2025年3月のコンビニの売上金額が、3月の数値としては過去最高で、客単価も3月の数値としては過去最高であったようです。客単価の数値が向上するのは、一般的には利益向上につながりやすい良い傾向です。売上をあげるために新規顧客を増やすのはなかなか簡単ではなく、既存顧客の買い上げ点数を増やして顧客単価が上がれば売上増加につながりやすいためです。ただ、コンビニのような巨大かつ複雑な組織の経営において、顧客単価が上昇した事実だけを切り取って好景気の傾向があると考えてしまうのはいささか早計です。
そこで本稿では、コンビニが本当に儲かっているのかを、利益構造を分解しながら分析し、今後、どのようなところで問題が生じる可能性があるかを解説します。
粗利益=客単価―仕入原価
小売業において粗利益は顧客の支払った金額からその商品を仕入れるために支払った仕入金額を差し引いて計算します。物価高が進む中、仕入原価が高騰を続けているから商品売価も向上し続けています。そのため、売価である客単価が上昇傾向にあるのは、物価高の中で当然の傾向です。
客単価が上がっている事実は値上げをしっかりと行えていることは示していますが、値上げの結果、粗利率がどうなったのかは情報公開されていません。一般的には物価高で商品価格だけ上昇すれば、あるいは商品の内容量が減少すれば、購入を見送る方が増加し、売上点数は減少しがちです。しかし、売上点数の減少を恐れて、原価に対するマークアップ率を低くすると粗利が減少します。ただでさえ割高なコンビニ商品において、このマークアップ率をどう調整しているのかは興味深いポイントです。
売上=客数×客単価
売上は客数×客単価で計算されます。そのため、客単価が上がっても、商品価格の値上げにより客数が減少するようでは売上は伸び悩みます。
この点に関しては客数は減少していないと言われています。客としては値上げには不満であっても、これまで使い慣れたコンビニやファーストフード店の利用は圧倒的に便利であり、スーパーで商品を購入したり、自炊した方が安く済むのはわかっているものの、スーパーの商品価格も値上がりしていることをふまえると、無理して遠出しても大した節約効果にはならないと考えてしまい(この判断は私は間違いだと思いますが)、結局、身近なコンビニやファーストフード店を使ってしまう方がまだまだ多いようです。こうして客数と客単価が維持できているのであれば、コンビニ業界は好調に見えます。
売上=店舗数×店舗あたり客数×客単価
上記の式をもう少し分解してみましょう。売上=店舗数×店舗あたり客数×客単価と、このように1店舗あたりの数字にまで分解して見てみると、アバウトに客単価は上昇、客数はキープという話にはならないと思われ、そこにコンビニの今後の姿が現れています。
都心のオフィス街やタワーマンション近隣の店舗、観光地の人通りの多い通り沿いの店などは安定した客数を維持しているのでしょうが、日本全体として人口減が進む中で、地方のコンビニやカニバリゼーションが繰り広げられる地域の店舗まで十分な客数を維持できているとは思えません。そのため、不採算店舗は閉鎖して、コンビニが少ない地域で人が増加している地域を発見して新規出店を進めていくことが不可欠で、今のコンビニはこの不断の努力により、客単価を上昇させながら、客数を維持できているのだと考えられます。
コンビニが収益を上げ続けるための今後のカタチ
コンビニは中国語では「便利店」と書くように、顧客に便利さを提供するため、割高で商品を販売し続けることができます。しかし、便利さを提供するために過分のコストをかけるようでは利益にはつながりません。利益を上げ続けるためには、①人口減少地域への新規出店はしない②夜間閉店にする③不採算店舗は閉店する、④観光地やイベント会場など、人の増加する地域を新規開拓し続ける、⑤適切な粗利率を堅持するといった対策を講じ続ける必要があります。つまり、個々の顧客目線で「ここにコンビニがあれば便利」と感じる場所にはコンビニはできず、人がたくさんいる地域に住むからその副産物としてコンビニが便利になるという構図で、コンビニを不断からよく使う方はそれなりに人の多い地域に住むことが不可欠の要件となっていくでしょう。
まとめ
コンビニの業績はこうして、細かい収益情報に分解して新陳代謝を繰り返し進めていくことで維持される構造となっています。私は、割高商品をコンビニで買う習慣はないため、コンビニが近くになくても構いませんが、コンビニが生活に欠かせない方は、しっかりと稼ぎを得て、人気エリアに居住・就職しなければなかなかこれからのコンビニで利便性を感じるのは難しくなるかもしれません。
当研究所では、収益管理や会計戦略の策定が得意な公認会計士・データサイエンティストが、様々なデータを分析して、ぼんやりしっていては見えにくいが極めて重要な不公正を見いだして顧客のより良い活動に貢献しています。下記よりお気軽にご相談ください。
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