カスハラ被害は民間企業の3倍、地方公共団体の業務は一部有償化すべき

リスクマネジメント

地方公共団体のカスハラ被害は民間企業の3倍

総務省が地方公共団体におけるハラスメントの実態を把握するため、全国の職員2万人を対象とした実態調査を行ったところ、地方公共団体の職員で過去3年間にパワハラを受けた経験があるという人は15.7%、セクハラを受けた経験があるという人は3.9%となりました。 民間企業を対象とした厚生労働省による同様の調査では「パワハラを経験」が19.3%、「セクハラを経験」が6.3%で、いずれも地方公共団体の方が少ない結果でした。 しかし、「カスタマーハラスメント」を受けた経験のある人は35.0%で、民間を対象とした調査の10.8%の3倍以上の数字となりました。これらの数字を見ると、公務員は民間企業よりも上司には恵まれやすい反面で、利用客応対が大変であることがうかがえます。そこで本稿では、こうした地方公共団体におけるカスハラの要因と対策について説明します。

手続に対する不満が引き金

地方公共団体でも特にカスハラの多い部署があり、広報や年金、福祉の部署では実に6割以上の方がカスハラを受けたことがある、という調査結果があります。これらの部署を見る限り、ハラスメントをしているのは高齢者が多いと推察されます。そして、ハラスメントに至る要因としては、年金が少ないという一職員にはどうしようもないものから、福祉などのサービスが悪い、手続が難しい、わかりにくいといった不満が原因だと考えられています。さすがに「年金が少ない」はどうしようもないことは発言者側も理解していると思われ、現代的には「待ち時間が長い」とか「手続が不便だ」といったオペレーション上の問題が主になっていると考えられます。そして、人手不足の中、地方公共団体も様々な工夫をこらしているものの、それが手続を複雑化させて利用客の不満増大につながっているケースもあると思われます。

安いサービスほどクレームは増える

一般に安いサービスほど、クレームは増えがちです。高いサービスは元から利用客が限定され、また、対価に見合ったサービス提供をしっかりと行っているからです。これに対し、サービスが安くなるほど利用客は格段に増えます。多数の客を安く回転させるためには、どうしてもオペレーションがマニュアル化し、紋切り型のサービスにならざるを得ません。その結果、対価を支払った客が、「サービスが悪い」と主張する構造がどうしても発生しやすくなります。そして、最も厄介なのは無料サービス。無料サービスを受ける側はサービスを受けて当然だと思いますし、客である以上、不満を述べても構わないと考えがちです。薄利多売は、現代的にはカスハラのリスクが高いビジネスモデルです。

現場対応の多い業務は危険

少ない人数で毎日自転車操業。そうした中小企業はたくさんあります。個々人の役割は一応決まっているものの、顧客や仕事量が多いためどうしても現場対応が多くなり、残業も恒常的に発生する。そのような現場は非常に危険です。「サービスが平等ではない」「待たされた」「わかりにくい」などと利用客からのクレームにつながりやすく、カスハラが発生しやすい環境にあります。ただでさえ忙しい環境でカスハラまで発生すれば、従業員の離職リスクも高く、こうした現場は中長期的な持続可能性が低いです。そのため、サービス対価を値上げして顧客数や仕事量を減らし、サービス内容を充実させなければ、やがて組織が崩壊してしまうかもしれません。

人手不足なら一部有償でサービス強化も一策

地方公共団体の話に戻り、上記の年金や福祉の部署は業務量がかなり多い反面で、利用客は無料なので何でもかんでも主張するというのが、カスハラが多い背景事情で、こうした事情が続けば、こうした部署に異動になった瞬間に退職してしまい、部署自体が組織として成り立たないおそれもあります。そこで1つの対策として、無償ではなく有償サービスにして、人を増員して個々の職員の負担を減らしてサービス内容を拡充することも考えられます。国の予算は変更できませんが、その予算を原資に業務を外部委託し、外部企業が運営する中で不足する事業資金は利用客が負担する、おそらくこれまで無償でサービスを受けられていた方からは激しい反発が予想されますが、それくらいしなければ、本当にこうした部署は崩壊しかねないのです。

まとめ

カスハラが発生している職場では、何らかの対策をしなければ組織の存続可能性が危ぶまれてしまいます。内部でできる対策としては、自転車操業をやめて、サービスの対価を値上げし、人を増員して丁寧なサービスを提供することで、外部を頼るのであれば、顧問弁護士にクレーマー対応を丸投げすることも考えられます。カスハラ問題は、現場で対応させるのではなく、経営者主導で、大切な自社従業員を守り切る意識が不可欠です
当研究所では、官公庁で特殊陳情人などの対応を任されるなど、悪質な利用客対応の経験豊富な弁護士が御社の従業員をカスハラから守るために協力いたします。職場環境を守ることは現代経営における上位対処事項です。下記よりお気軽にご相談ください。

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