オンラインパチンコ動画投稿でYouTuberを逮捕
オンラインでパチンコをしている様子を動画撮影してYouTubeに投稿したとして、その投稿者らが逮捕されたという報道がありました。この報道、当然と捉える方もいれば、「え?何で」と捉える方もいると推察されます。前者の方の考えとしては「ゲームではなく、パチンコだから」後者の方の考え方としては「ゲーム実況があふれている中でパチンコだけやり玉にあげるのはおかしい」といった観点が指摘されがちですが、この問題、パチンコの特殊性には触れる必要があるものの、実はなかなか法的に難しいポイントを抱えています。
そこで本稿では、こうしたオンラインパチンコ動画の投稿が、法的にどのような問題があり、何らかの工夫を凝らせば投稿が違法とならないルートがあるのかどうかの検証を通じて動画投稿やオンラインサービスの正しい認識につながる情報を提供いたします。
オンラインカジノの摘発が進む
今年に入り、オンラインカジノの摘発が進んでいます。その結果、芸能人やスポーツ選手などが活動自粛を余儀なくされ、さらにグレーな著名人に対する取り扱いに難儀しています。
日本ではカジノは日本の法律で特別に認められたもの以外は賭博罪の対象となります。問題を複雑にしているのは、海外では賭博が合法な国もあり、その国から発信された媒体を通じて日本国内でカジノに参加すると日本の刑法に抵触するという点です。
大多数の人はスマホで楽しめるサービスの提供元の国がどこであり、その国の法律がどうなっているかなどを調べることはありません。しかし、刑法犯は知らなかったでは済まされず結果責任を負わされてしまいますので、外国語で記載された説明文の多いコンテンツの活用にあたっては慎重に対応する必要があります。
逮捕容疑は著作権法違反
今回のYouTuberらの逮捕容疑は賭博罪ではなく著作権法違反です。おそらく賭博罪での立件を目指してそのサイトを張っていたと思われますが、投稿者も賭博の定義は理解しており、デモマネーを活用していたため、賭博行為は認定できませんでした。
賭博とは偶然の事象を通じて利益や損失を生じるものであるため、デモマネーをいいくらかけても、プレーヤーは損も得もせず、これは賭博にはなりません。ただパチンコゲームで遊んだだけです。それでは違法ではないのではないかと考えられるところですが、ゲーム実況は「原則違法」であることをあまりに多くの方が知らなさすぎる点が問題で、警察は何らかのかたちでこのサイトの対策をしなければという観点で、苦肉の策として著作権法違反を持ち出したのではないかと推測されます。
ゲーム動画もガイドラインに従わなければ違法
YouTubeで最も多いジャンルがゲーム実況だと言われています。ゲーム実況は簡単に始められますし、観客もつきやすく、投稿者と視聴者双方にウィンウィンのコンテンツだからです。しかし、観客がつきやすいのは、投稿者がすごいからではなく、ゲームの魅力が大きいからで、その恩恵はゲーム会社が一義的に受けるべきものです。
ここで、ゲームで使用される画像や動画、音楽などの著作権はすべてゲーム会社にあります。出版物のイラストや記事などを無断転載できないのと同様に、ゲームのコンテンツも勝手に公開できないのが基本中の基本です。
しかし、ゲーム実況動画は、ゲーム会社からすれば無料で自社のゲームを広告してくれる媒体でもあります。そのため、限度をわきまえた投稿はゲーム会社にもメリットがあり、人気ゲームはガイドラインを公表してその範囲内であれば著作権を行使しない、というのがゲーム実況動画が法律に違反しないロジックになります。
人気コンテンツのただ乗りはできない
このように、ゲーム実況動画はガイドラインを確認し、その内容に従う限り違法ではないのですが、特に人気ゲームは動画同士の競争が激しいことから、このガイドラインを逸脱したコンテンツが普通に投稿サイト上で提供されています。こうした動画が直ちに摘発されるわけではありませんが、ゲーム会社がその気になれば、すぐにでも著作権法違反で告発され、警察の捜査が始まる可能性があります。
オンラインパチンコに関しては日本国内で無料PRする必要性は高くなく、ガイドラインで留保して動画を広げる意義は小さい(賭博が違法な日本であまり目立ってほしくない)ため、これはゲーム実況動画に似ているコンテンツであっても著作権法違反は免れられません。
まとめ
著作権法は一般人の方には特に理解の難しい難解な法律です。最低限理解しておくべきこととして、他人が作成した文章や画像、音楽、動画などはほぼすべてに著作権があり、これを自分のスマホやPCにダウンロードして個人で楽しむところまでは良いのですが、1人でも他人に見せると著作権侵害となり違法です。そして、ゲーム動画の投稿については原則違法ですが、ガイドラインを守る限り違法を免除されるという構造となっており、ガイドラインは必ず確認して遵守すべきこと、ガイドラインがないコンテンツは動画投稿できないことあたりはしっかりと押さえておくべきでしょう。
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