オンラインで見知らぬ人と企画をする際の危険性
SNSで同じ趣味を持った者同士でチームを組んで副業やイベント機会を行う方が増加しています。ここでは、共通の趣味を題材とした動画作成プロジェクトのために、シナリオ制作が得意なAさんと、画像作成が得意なBさん、そして動画編集担当のCさんが、SNS上で意気投合してお互いに本名を知らないままSNSのハンドルネームを識別記号として動画を作成して公開するグループワークを始めようとするケースを想定します。
こうしたオンライン上のグループワークは、現実に仲間を集める必要がなく、現実に顔を合わせたり会議室を予約したりするなどの物質的な煩わしさもないため以上に便利です。しかし、相手の素性がしれないなどオンライン上で完結する手続であるがゆえの危険性も孕んでいます。
そこで本稿では、こうしたオンライン上のグループワークを進めるうえで特に注意すべき内容を解説します。
相手の評判を確認する
オンライン上でチームを組む場合、相手の顔が見えないことがメリットであり、デメリットでもあります。前者のメリットとしては外見で勝手に相手を評価しないで済むことで、美男美女だからその言うことは正しく、太った人は見下す、などといった偏見を排することが出来る点があります。
他方で、デメリットとしては相手がどのような人であるか素性が知れないことがあります。最近、まっとうにみせかけたオンライン取引における詐欺や、普通のアルバイト募集に見せかけた闇バイト勧誘が急増しており、これをオンライン上の情報だけで見破るのはなかなか困難です。そのため、対策として、オンライン上でチームを組む場合、その相手がどのようなコミュニティの属しているか、どのようなサイトを見ているか、周囲の評判はどうか、などをしっかり調査することが大事で、調査の結果怪しい情報が出てきたらその相手と距離を置くことも考えるべきです。
重要事項は一方通行でもどんどん投げかける
オンライン上のグループワークでよく起こりがちなのはコミュニケーション不足です。対面ワークであればいろいろ言葉に出しますし、言葉以外の身振りや表情などによる情報の授受も行われますが、オンライン上ではそこに書かれた内容がコミュニケーションのすべてとなります。自分では当然の前提だと思っていることまでなかなか書かない方も多く、こうしたことから思わぬ前提で意見の食い違いが発生することがあります。
ただ、対面のやりとりでは「言った、言わない」が生じ、立証の問題が生じますが、オンラインコミュニケーションでは証拠を残すことが容易です。そこで、オンラインでコミュニケーションをする際には相手にうざがられても、重要情報はどんどん投げかけていくべきです。長文が嫌であれば相手は適当に読み飛ばしますし、読み飛ばした責任は相手にあると主張することができるからです。
お金の絡む話は慎重に
オンラインコミュニケーションが不足しがちな中で、特に注意してやりとりすべきはお金の話です。勝手に立て替えた費用を後で折半しようと持ちかけるようなことは一見、当たり前の光景にも見えますが、オンラインでは特に「聞いてない。何で勝手にそんな費用払ったのか?」とトラブルになりがちです。
目に見えた収益や費用の分担の話だけでなく、例えばチームで作った動画について、アフィリエイト収入のある自身のブログにアドレスを貼るような事でも、「収入を横取りしている」などと指摘される可能性があります。
お金の話は例え少額でも揉める可能性が高く、それはオンラインで相手の顔が見えないことにも起因する面があると考えられます。そのため、どのような経路で収入があり、どのような経路で収入があり、費用支出があり、これらをどう分配するかはできる限り見える化する取り組みが望ましいでしょう。
紛争解決はコスパが悪いことを認識して活動する
こうしたオンラインでの取り組みでコミュニケーション不足に起因してトラブルになったとして弁護士に相談するケースも増えているように感じます。こうしたトラブルは著作権の問題が絡んだり、相手の氏名住所が不明でその調査から始める必要があったり、住所が発覚しても遠方であったりなど、オフラインのグループワークのトラブルよりも紛争解決に手間を要するケースが多いです。
また、トラブルの解決のために100万円を超える賠償を求めるようなケースはそれほど多く、収入や経費の分担への不満や若干の慰謝料・迷惑料でまとめるべきケースがほとんどです。一般的に請求額が30万円を下回ると弁護士に依頼すると弁護士費用で赤字になってしまうため、悔しく感じてもコスパを考慮して弁護士を立てることを断念せざるをえないケースが多いことにも気をつける必要があります。
まとめ
SNSで気軽に趣味の合う仲間に出会えることは非常に便利で、その延長で一緒に同じ目標に向けて頑張る環境を構築できることも素晴らしいことです。しかし、オンラインであるからこそコミュニケーションは不足しがちで、特に個々人が当然の前提だと思っている内容で行き違いが生じたり、(比較的少額の)お金の話で揉めたり、相手が悪い人間であれば犯罪に巻き込まれたりと様々な危険があります。そのため、こうした危険をしっかりと認識した上で、注意深く相手の人となりや言動を観察し、コミュニケーション不足を起こさないよう積極的に情報発信していくことが必要です。
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