「みどりマキバオー」の運転代行業者に原作者が強い不快感
往年の人気漫画「みどりマキバオー」の名称を作者や集英社に無断で用いて運転代行業者を営業していたというケースが報道されていました。一見、簡単に訴訟で勝てそうな案件ですが、1つ1つ分析していくと意外に難解であることが判明するケースです。
そこで本稿では、このケースを多面的に分析したいと思います。
集英社は商標権を有しているが
この名称について、週刊少年ジャンプの発行元である集英社は商標権を有しています。しかし、商標権はあらゆる範囲で取得することは困難で、集英社保有する商標権も出版やエンタメ系中心で運転代行業はカバーされていません。
商標法は異なる領域での同じ商標の棲み分けを容認する法律であるため、本件では商標法に基づく請求はできません。
タイトルには著作権は認められない
「みどりマキバオー」は著名な名称ですが、この名称には著作権は生じません。著作物と言えるためには創作性を有する一定分量の情報が必要であるためです。
したがって著作権法に基づいて当該名称の差し止めや損害賠償を行うことはできず、別の法律による手法を検討する必要があります。
イラスト使用は明確にアウト
このケースですが、マキバオーの実際のイラストを使用していたため、ここが確実に著作権侵害で違法となります。具体的にはイラスト使用の差し止めと、イラストの利用期間や頻度に応じた利用料を請求できます。
ただ、仮にイラストを使用していなかったとしたら、このケースは訴訟をしてもかなりきわどい件になっていたかもしれません。
不正競争防止法も際どいところ
「みどりマキバオー」という名称は、著作権法では保護されませんが、著名な名称である以上、不正競争防止法で保護される可能性があります。具体的には本家の名称を汚染(ポリューション)するケースと、ただ乗り(フリーライド)によって不当な利益を得たような場合に権利行使が可能です。
ただ、まず前者のポリューションによる請求は困難でしょう。運転代行業に名称を使用されて、どの程度名称の信用が失墜したかの説明が困難なためです。
後者のフリーライドですが、結局は人気の名称を用いてどの程度売上が上がったのか、という相手からの回答待ちで、業界平均より大きく売上が増加したような場合を除いて、因果関係のある損害を立証することはなかなか大変です。
まとめ
以上の通り、知的財産権法は複雑で、一見明らかに違法に見えるケースでも厳密に検討すると簡単でないことはしばしばあります。
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